生命倫理
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ゲノム時代の生命倫理 : 医療と医学研究の狭問で(第14回日本生命倫理学会年次大会シンポジウム)
白井 泰子
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2003 年 13 巻 1 号 p. 63-69

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抄録
2001年3月に文部科学省・厚生労働省・経済産業省は「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を告示し、2002年6月には文部科学省・厚生労働省による「疫学研究に関する倫理指針」が告示された.こうしたー連の流れからは、ガイドラインを策定しその遵守を求めることで関連領域における医学研究の適正化を図ろうという行政の姿勢が見て取れる.これらの指針では、各々の研究機関や病院に設置されている倫理審査委員会が適正に機能していることを暗黙の前提として、研究の科学的妥当性と有用性の検討ならびに被験者・試料提供者の人権の尊重とプライバシー保護の観点に立った研究審査という任務を委員会に課している.しかし日本では、研究機関や病院における倫理(審査)委員会の設置さえ十分には把握されていない状況にある.三省指針等の立脚点である「倫理(審査)委員会が適正に機能している」という前提自体の妥当性については、日本の倫理(審査)委員会の実状を把握した上で改めて検討する必要があろう.我々のプロジェクトでは2002年3月〜4月にかけて、全国の大学医学部・医科大学、医学系研究所および病院など2,248施設を対象として「遺伝子解析研究を中心とした倫理審査委員会の現状に関する調査」を実施した.本報告では、調査を通じて見えてきた日本の倫理(審査)委員会の実状と問題点についての検討を行うと共に、研究倫理と医療ケアの倫理との乖離に対処するさいの問題点についても言及した.
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2003 日本生命倫理学会
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