抄録
2003年、フロリダ州において、裁判所の命令により、13年間PVSであった女性の胃痩チューブが抜去され、栄養補給が中止された。この事件は全米中に議論を巻き起こし、州議会は、議会制定法により、この裁判所命令を実質的に覆す権限を州知事に与え、これを受けた知事命令によって、再び栄養補給が行われることとなった。しかし、フロリダ州裁判所は、もっぱら権力分立を理由として同法を憲法違反であると判示した。その後のチューブ抜去に対して、連邦議会による介入がなされたが、結局チューブは外されたまま、この女性は死を迎えることとなった。本稿では、(1)事実の概要と裁判所が抜管を認めた理由、(2)その後の世論と政治的な動き、(3)フロリダ州法および連邦法に対する裁判所の判断、を紹介し、よって、プライヴァシーとしての患者の治療拒否と民主制の過程による政治的介入との関係につき若干の検討を加えたい。