抄録
本研究は、緩和ケア先進国である欧州の緩和ケアの概念や倫理的問題を検証することで、わが国のがん患者・終末期患者・難病患者等のQOL向上に向けた緩和ケアのあり方の検討に資することを目的とした。方法は、PALLIUMプロジェクトの報告書、欧州緩和ケア協会による国別報告等を基に、緩和ケア概念や倫理的問題等の比較検討を行った。緩和ケアは、ホスピス哲学に基づく、全人的ケアと緩和医療の融合であることを歴史的経緯から整理し、WHOの緩和ケア定義の論点に基づき、欧州における緩和ケアを考察した。緩和ケアのシステム、対象、看取りの場、適応時期、告知のあり方、終末期の治療における意思決定、緩和ケアと安楽死・自殺幇助の見解において、欧州各国の緩和ケア実践は、一定の水準を保ちながらも、その文化的背景によって多様であった。欧州の現状や議論は、日本で緩和ケアを必要としている国民の全てが、適切なサービスを受けられるようなシステムの構築にとって、参考になるように思われた。