生命倫理
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宗教の役割と生命倫理 : 死者なき倫理の奢り
竹内 弘道
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キーワード: 死者, , 救済, 宗教, 遺族
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2008 年 18 巻 1 号 p. 166-169

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抄録

古来より人びとが宗教に期待したのは死者の魂の救済である。日本の民俗的な宗教の世界では、遺族には、恨みや未練を残した死者を、「あの世」に送り、安定した存在に変えてやる義務があるという感覚が、古くから今日まで生き続けている。我々はいつも死者を想い、死者からの思いを承け継ぎ、また死者のあの世での幸せを願っていることに気付く。倫理とは生者の間のルールであるが、宗教は死者も生者も過去世も来世も包含する意味世界を提示するものであり、ここが倫理と宗教の大きな違いであろう。生者だけの視点から論議される生命倫理に対し、さまざまな疑問や違和感を感じざるをえない。例えば、死者の意思も確認せずに臓器提供を行う親族は、一体亡き人になんと申し開きするのだろうか、死者は「安らかな死者」となることができるのであろうか。

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2008 日本生命倫理学会
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