生命倫理
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偶発的所見の対処義務の基礎付け問題とその含意
林 芳紀
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2010 年 20 巻 1 号 p. 22-29

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抄録

研究者は、研究の過程で発見された偶発的所見に対して、どのように対処すべきか。そもそも、なぜ研究者は偶発的所見に対処しなければならないのか。本論文では、研究者の偶発的所見への対処義務の基礎付け問題に関する既存の文献の中から抽出される二つの倫理的源泉、すなわち、(1)一般的善行と、(2)被験者の個人情報やプライバシーに対する特権的なアクセス権の取得について、概観する。そのうえで、この基礎付け問題の結果が、研究者の偶発的所見への対処義務の具体的な内容、とりわけ、研究者は偶発的所見をめぐる偽陽性・偽陰性エラーの危険性に対してどこまでの対策を講じることが要求されるのかという問題に対して、どのような含意を持つかを検討する。以上の議論を通じて、最終的に、偶発的所見の対処義務の倫理的源泉に関する問題は、人を対象とする研究に従事する研究者のインテグリティをめぐる重要な問題を提起していることを、明らかにする。

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2010 日本生命倫理学会
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