生命倫理
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臨床試験におけるプラセボ対照群の正当性に関する倫理的検討
大垣 拓郎藤野 昭宏
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2010 年 20 巻 1 号 p. 38-46

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抄録
1990年代後半に発展途上国で実施された「HIV母子感染予防臨床試験」を大きな契機として、臨床試験でのプラセボ対照群に関する国際論争が活発化した。近年では、欧米諸国を中心にプラセボ対照臨床試験が肯定的、積極的に実施されている。この間、国際倫理指針(ヘルシンキ宣言、ICH-E10、CIOMSガイドライン)が策定・改訂され、ある一定の条件下でのプラセボ使用が容認されている。RCTをはじめとするプラセボ対照試験により科学的信頼性の高い知見が得られる一方で、有効な治療法が既にあるにもかかわらず被験者を無治療な状態にするなど倫理上の問題点は少なくない。プラセボ対照試験を行う場合には、被験者の福利という倫理的側面を十分に考慮した上で、できるだけ高い質の科学性を担保できるような研究デザインを工夫することが医学研究者に求められる。一律なプラセボ対照試験に頼ることなく、科学性が保証されるデザインの非プラセボ対照試験を選択することも考慮すべきである。
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2010 日本生命倫理学会
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