生命倫理
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親には最善の子どもを産む義務があるか : PGDをめぐる一論争の批判的考察
伊吹 友秀児玉 聡
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2013 年 23 巻 1 号 p. 4-13

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抄録
着床前診断の技術的な進歩は、日産婦の会告で許容されている以外の目的での利用の可能性を人々に拓いている。そこで、本論文では、将来的なPGDの応用可能性を見据え、その利用に関する倫理規範や行為指針について考察することを目的とし、文献調査に基づく理論的な研究を実施した。中でも、親には最善の子どもを産む義務があるのだという生殖における善行原則は、多くの賛否の議論を巻き起こしているため、この原則をめぐる欧米の論争を整理し、その意義と限界を分析した。その結果、生殖における善行原則が常に守ることが要求されるような絶対の義務であるか、それとも、ロスの一応の義務のような義務であるのかについて、原則の擁護者らと批判者らの間で解釈に対立があった。そこで、本論文では、この論争に一つの解決の糸口を見出すために、原則に従うべき「よい理由(good reason to do)」について考察を加え、従来の功利主義的な議論の限界を指摘し、徳倫理学的な観点からの補完が新たな理論的可能性を持つのではないか、ということを提言した。
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2013 日本生命倫理学会
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