生命倫理
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報告論文
Public Bath Movementと近代日本の公設浴場設立
‐身体観・道徳観に注目して‐
川端 美季
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2015 年 25 巻 1 号 p. 133-140

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抄録

 本稿は、欧米のPublic Bath Movementの背景及び展開とその基底にある身体観および道徳観を整理したうえで、大正期の公設浴場設立におけるPublic Bath Movementの理念や思想の受容や導入について清潔さの意味を中心に検討する。欧米で19世紀後半推進されたPublic Bath Movementは貧民や労働者の身体を清潔にし、彼らの道徳性を向上させ市民化させるという意味をもっていた。欧米と同様に労働者や貧民をめぐる社会問題を抱える日本でも欧米を参考にして公設浴場を設立するに至った。日本でも公設浴場は労働者や貧民を対象にするものであったが、入浴に労働力の再生産を意味する慰安という意味が新たに付与された。また、入浴習慣が途絶えていた、あるいはなかった欧米と比較する過程で、日本人が清潔を好む国民・民族であるという認識と結びつき、「日本」的道徳性が日本の清潔さには内包されていった。

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