生命倫理
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報告論文
重度遷延性意識障害患者への治療制限の是非
‐その状態でも生存を希望する患者側の意思があろうとも‐
福原 徹
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2015 年 25 巻 1 号 p. 38-47

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抄録

 遷延性意識障害状態の高齢者は今後増大が見込まれ、限られた医療資源を圧迫していく。当院における今後の高齢者患者数予測、及び重篤な脳出血における人工呼吸器治療を例に、延命治療の選択による医療費の差異から高齢者医療の現状を認識し、更にアンケートによる重篤な後遺症が残る場合の治療希望の傾向調査から、 延命治療の拒否はどの程度選択されるのかを探った。結果として、高齢者の入院比率は今後増大していき、 2030年には75歳以上の患者が入院患者の半数以上を占める。人工呼吸器の装着は患者側の希望があれば選択可能であるが、入院費は約83万円増加し、この治療を制限すれば全国では約17億円の医療費削減が可能であると 概算された。アンケート結果からは延命治療の拒否は少数であり、自発的な医療の差し控えは期待できないことが示唆された。これらの結果より、医学的な条件のみで高齢者の治療を制限する必要性を提言 し、倫理的な問題点が今後討議されることを期待する。

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