2016 年 26 巻 1 号 p. 159-168
個人の尊厳と意思を尊重した終末期医療・ケアが求められる中で、自らの最期についての「意思決定」を行うための支援プロセスには、多くの困難が存在している。本稿では、病や死の問題を知り、考え、話し合うための「学びのコミュニティ」の必要性を提唱し、その実践としてエンドオブライフを考える市民参加プログラムを実施し、エンドオブライフケアにとって「学びのコミュニティ」がどのような意味をもつかを検討した。 結果として、「学びのコミュニティ」の実践は、主体的な生き方を涵養し他者から支えられる実感を得るうえで重要な効果があることが示唆された。同時に、エンドオブライフについて参加者の多くが家族と話すことに困難を感じていて、それゆえに、家族以外の人たちとエンドオブライフについて考え、話し合う場が重要であると示唆された。そのような場は、他ならぬ「自分」がどう生きたいかを問い返すための場として構想されるべきと考える。