生命倫理
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原著論文
「人間の尊厳」と討議
堂囿 俊彦
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2016 年 26 巻 1 号 p. 26-34

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抄録

    近年の生命倫理学では、人間の尊厳と対話が重要な役割を果たしている。しかし人間の尊厳は、その曖昧さのためにしばしば批判にさらされてきた。そこで本稿では、対話を重視する討議倫理学の領域において、人間の尊厳がどのように議論されてきたのかを確認し、それを通じて、尊厳概念の再定式化を試みる。マティアス・ケットナーは、人間の尊厳を、社会的な討議を通じて、その内実を確定されるべきものとして理解し、他方で、ウーヴェ・ファールは、人間の尊厳を、より個別的・具体的な事例に関して、参加者の利害関心を明らかにする発見的な道具であると指摘する。これらの立場を踏まえ、本稿では、尊厳をめぐる合意は、社会的なレベルにおけると同時に、個別的なレベルにおいて可能であること、そしてそうした合意の背景には、原理の実質とは異なる形での実質、さらにはそれを捉える感受性が前提とされていることを示す。

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2016 日本生命倫理学会
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