生命倫理
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報告論文
臨床試験に関与した、がん患者の語り
-「治療」と「研究」を区別することの困難さに関する考察-
吉田 幸恵中田 はる佳武藤 香織
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2017 年 27 巻 1 号 p. 122-131

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抄録

 現在目覚ましい発展を遂げているがん治療の研究開発には、がん患者を対象とした臨床試験が必須である。研究倫理上の要請として、患者が臨床試験を自分のための治療だと捉えてしまう「治療との誤解」に陥る状態は避けるべきとされるが、がん臨床試験における患者の経験やその受けとめは明らかではない。

 そこで、本研究では、がん臨床試験における患者の関与経験の実像に迫るべく、11名のがん患者にインタビューを行った。対象者のがん、臨床試験の種類は多様であった。

 本調査から、臨床試験の説明の場面が「病名告知」や「治療選択の中での臨床試験の提案」と捉えられ、研究と治療の違いを理解しづらい状況が示された。また、臨床試験が研究であることは理解しつつ、がん根治の「最後の望み」としてそれを受け入れる患者もいた。医療者側は多様な臨床試験の参加動機を尊重しながら、極端な誤解なく、患者が主体的に参加できるような参加同意のあり方を検討しなければならないだろう。

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2017 日本生命倫理学会
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