COVID-19感染拡大に伴う「緊急事態」における自他関係は相互的/互恵的な関係が前提となっており、自 己への配慮と他者への配慮とが一致するような議論が活発化している。とりわけ注目を集めているのが医療資源の不足をめぐる議論、緊急事態におけるトリアージの議論である。従来からも様々に論じられてきた主題であるが、今般の議論においては〈緊急時におけるトリアージに関する問題〉と〈自己決定における自他関係の問題〉とが混在し、論点と批判とが相互に合致していない。そこで本稿では、まず、「COVID-19の感染爆発時における人工呼吸器の配分を判断するプロセスについての提言」を参照しつつ、〈緊急時におけるトリアージ に関する問題〉と〈自己決定における自他関係の問題〉 との関係を検討する。そのうえで、他者への配慮としての「自己への配慮」を手掛かりとして自己決定と「関係的自律」との関係を検討し、全体の理論構造を明らかにする。