日本経営倫理学会誌
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日本企業の経営とガバナンスに見る二極化現象 : 三菱自動車工業不祥事に焦点を当てて(自由論題)
西藤 輝
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2006 年 13 巻 p. 159-188

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抄録

1990年代の日本経済、そして経済を担う日本企業の経営について内外のアナリストは周知の通り、「失われた十余年」 a "lost decade"と主張している。確かに1990年代を通じて今日まで日本経済の低迷、企業業績の悪化、株価並びに時価総額推移等いずれの指標をとっても失われた十余年と云うことは出来るが、その背景には1980年代を通じてバブル経済を生んだ真の意味での経営とガバナンスの不在がある。「失われた十年」は1980年代に求めることが出来る。而るに1990年代後半から今日にかけて多くの日本企業は真の意味での経営に覚醒し、ガバナンス改革を含む健全経営の主要素において「進化」を遂げてきた十年である。企業経営に見る「進化」は以下七つの"C"で象徴的に捉えられる。・Business Creeds経営理念)・CEO(Executives and managers、最高経営責任者)・Corporate Culture(企業風土・企業文化)・Corporate Governance(コーポレートガバナンス)・Compliance/Code of Conduct(倫理・法令順守)・Corporate Social Resporisibility(企業の社会的責任)・Culture and Business Practices within Particular Industries(業界風土と取引慣行) 七つの"C"に象徴される企業経営の根幹には企業倫理Business Ethicsがある。そうした「進化」の企業群のなかでトヨタ自動車の優れたコーポレート・ガバナンスの事例を七つの視点から考察する。進化の企業群の傍ら、経営劣化を生んでいる「退化」の企業群の存在がある。そして日本の企業社会は「進化」と「退化」の二極化現象を生んでいる。本稿では「退化」の企業群を2004年における十大企業不祥事を通して考察し、企業不祥事の象徴的存在である三菱自動車工業の不祥事概要と不祥事要因に焦点を当てる。「進化」と「退化」の日本企業の実態とその要因を追求することを通じて健全経営と望ましいコーポレート・ガバナンスの有り様を提示する。

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2006 日本経営倫理学会
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