本研究では従業員支援プログラム(EAP)の一環として電話相談に従事する心理臨床家19名を対象に,面接相談と電話相談で準拠する治療理論や留意点に関するアンケート調査を実施した。その結果,面接相談で人間性心理学やブリーフセラピーに準拠する心理臨床家は電話相談でもこれらに準拠していることが示唆された。また,臨床上の留意点として,面接相談では11個(視覚情報,共感的理解など),電話相談では10個(聴覚情報,解決に向けた具体的な提案など)の質的な小カテゴリーが生成され,治療構造の差異による治療的関わりの変化が示唆された。さらに,電話相談経験年数が長い心理臨床家ほど声に着目しており,電話相談では「声へのジョイニング」が重要であると考えられた。