乳腺甲状腺超音波医学
Online ISSN : 2759-5013
Print ISSN : 2187-2880
JABTS 第1回春季大会/甲状腺 ワークショップ『遺伝性甲状腺疾患の超音波と臨床像』
家族性大腸腺腫症と篩状モルラ癌
西嶋 由衣檜垣 直幸衛藤 美佐子丸田 淳子村上 司
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2025 年 14 巻 3 号 p. 34-37

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抄録
 家族性大腸腺腫症(Familial adenomatous polyposis;FAP)は,APC 遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントによって大腸ポリープが数百~数千個生じる腫瘍症候群で,常染色体顕性遺伝形式をとる.大腸以外の疾患は様々で,胃底部や十二指腸のポリープ,デスモイド腫瘍などがある.甲状腺癌の発生はほとんど女性であり,FAP 女性患者の約15%に認められる.種類としては通常型乳頭癌もみられるが,篩状モルラ癌が特に多い.
 篩状モルラ癌は,組織発生不明の甲状腺腫瘍で,甲状腺癌の約0.1%程度とされ,FAP 関連の一部分症としての家族性と,散発性がある.家族性では多発性,散発性では単発の傾向があり,家族性の割合は約半数である.特徴としては若年女性にみられ,リンパ節転移はみられず悪性度は低いとされる.
 篩状モルラ癌は,超音波像では悪性所見を呈することは少なく,特徴的な所見がない.組織学的には濾胞構造や篩状構造で内腔にはコロイドを欠くことが特徴で,扁平上皮様の充実性胞巣(モルラ)が散在性にみられる.腫瘍細胞は円柱状か立方状でしばしば淡明な核がみられ,核内封入体や核溝の出現頻度は少ない.穿刺吸引細胞診で篩状モルラ癌疑いとなる割合は約半数で,乳頭癌と診断されることもある.
 そのため,診断には家族歴,既往歴の聴取と年齢性別,穿刺吸引細胞診の結果が重要となる.
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