抄録
本稿では,ウェーブレット解析を用いた区分的線形(PWL)システムのトランジションタイム(離散状態の遷移時刻)の推定手法を提案する.いったんトランジションタイムが得られれば,入出力データを離散状態の遷移を含まない連続ダイナミクスに分割でき,それぞれに既存の連続システムの同定法を適用できる.
まず,PWLシステムの離散状態の遷移の可検出性を定義し,その仮定のもと,出力信号をテイラー展開した.つぎに,出力信号のウェーブレット変換の特徴的なパターンを明らにした.その上で,解析パターンに基づいたトランジションタイムの推定手法を提案した.最後に,数値例に用いて,提案手法の有用性を示した.