抄録
システムのパラメータは,経年劣化や環境変化等によって変化する.この問題を解決するため,適応制御手法が提案されてきた.しかし,初期の適応制御手法の研究では,アクチュエータの性能限界等による入力飽和が考慮されていないという問題があった.近年、筆者らは,入力飽和が存在する1入出力システムに対する適応制御手法を提案した.
本研究では,入力飽和が存在する1入出力システムに対して開発された適応制御手法を入力飽和が存在する多入出システムに拡張した手法を提案する。本手法は,高周波ゲイン行列のすべての主座小行列式が存在し,そして,その符号が変化しないシステムに対して適用できるという特徴がある.最後に数値シミュレーションを用いて,一つの設計パラメータを設定することにより,追従誤差の性能を改善できることを示す。