2022 年 42 巻 1 号 p. 30-37
歯科インプラント治療において,上部構造装着後の経年的骨変化に影響を及ぼす生体力学的要因については不明な点が多い.本研究は,歯科用コーンビームCT(CBCT)画像から上部構造装着後1 年間におけるインプラント周囲骨の3 次元的変化を解析し,その変化に影響を与える因子について探索することを目的とした.下顎臼歯部単歯欠損に対して埋入されたインプラント15 本(13 名)を対象とした.最終上部構造はスクリュー固定式のモノリシックジルコニアクラウンとし,インプラント埋入から平均4.6 カ月後に装着された.CBCT 撮影は上部構造装着時と装着から平均12.5 カ月後の2 回施行した.両CBCT 画像はインプラント体を基準に3 次元的に重ね合わせ,インプラント体の頰側骨部の1 年間の骨量変化を算出した.頰側骨部の骨量変化とそれに関連しうる因子(インプラント頰側骨の厚み・頰側骨量,クラウン-インプラント比(C/I 比),欠損形態:中間欠損部または遊離端欠損部)を重回帰分析により検討した.頰側骨量については,増加症例と減少症例のどちらも認められたが,変化量は顕著ではなかった.頰側骨量変化は多くの場合インプラントプラットフォーム付近で認められた.重回帰分析の結果,C/ I 比が大きいことが頰側骨量の増加に有意に影響した(p < 0.05).C/I 比が上部構造装着後のインプラント頰側骨量 変化に影響を及ぼす可能性が示唆された.