顎関節症とくに顎関節円板障害について,臨床研究を踏まえた診断と治療にかかわる考え方を述べた.EBM の浸透によって1990 年代初頭に医学研究の方法論に大転換がもたらされ,顎関節症の診断と治療は,その影響を強く受けた.筆者の一学徒としての歩みを交えて,その転換について述べるとともに各種治療法の臨床成績と自然経過を概説し,顎関節症が時間経過とともに症状が緩和することの多い疾患であることを示した.また,補綴的な要求から咬合位を改変しなければならない場合に,治療介入がもたらすリスクについて,スプリントの装着が関節空隙にもたらす変化に着目し,ファーラー(Farrar & McCarty, 1982)の顎関節症の病態の分類に即した咬合挙上の許容度について解説した.とくに一般歯科臨床医が補綴的に咬合位を変更する際の,顎関節症の診断と介入の適否について述べた. 【顎咬合誌 44(1):27-45,2024】
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