日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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特別寄稿
  • 二宮 嘉昭
    原稿種別: 特別寄稿
    2024 年 43 巻 2 号 p. 109-
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    上顎洞に粘液嚢胞を有する患者に,粘液嚢胞を縮小させた後,上顎洞底挙上術を行った1 例を報告する.患者は 49 歳,男性で,インプラント治療を希望され,紹介元歯科より当科受診となった.初診時,上顎は無歯顎で同部歯 槽粘膜に異常所見は認めなかった.エックス線検査より右側上顎洞内に粘液嚢胞を,両側上顎臼歯部歯槽骨に著明な垂直的骨吸収を認めた.上顎顎堤異常吸収の診断の下,初診7 カ月後, 全身麻酔下に両側上顎洞底挙上術を施行した.右側は骨窓を形成した後,粘液嚢胞の粘液をシリンジ(18 G)にて穿刺吸引した.上顎洞粘膜を挙上した後,骨補填材と血液との混合移植材料を上顎洞底挙上部に緊密に填塞した.術後経過は良好で,合併症もなく,3 年4 カ月を経過している.【顎咬合誌 43(2):109-113,2024

症例報告
  • 日野 悦子, 川口 智, 橋本 雅人
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 43 巻 2 号 p. 114-
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    【症例の概要】54 歳,女性.主訴;歯間が広がってきた.初診時所見;全顎的に中等度歯周炎を認め,特に2歯の骨欠損は著しく,病的歯牙移動(PTM:pathologic tooth migration)により歯間空隙を生じ,審美障害を訴えた.【治療方針・治療経過】患者は矯正治療を希望されたが,まずは歯周基本治療を行い,再評価にて矯正治療等の検討をすることとした.徹底した炎症のコントロールに努めたことで,矯正治療や外科・補綴処置をすることなくPTM を改善することができ,現在,術後約3 年経過している.【考察】歯周炎患者におけるPTM の割合は約33 ~55%とされ,審美障害を訴える場合も多い.原因は多因子によるものとされているが,炎症と力の問題が大きいと考えられる.そこで安易に矯正治療を行わず,徹底したOHI と適切なインスツルメーションとTCH に対する指導を行った.結果,矯正治療や外科・補綴処置を行うことなく,低侵襲な介入のみで PTM が改善され,SPT へ移行できたと考えられる.PTM は1カ所に限局して起こるわけではなく,個々の歯とそれを含めた 歯列全体に起きている.歯周治療を通じて,PTM が改善することで空隙の閉鎖のみでなく歯列の連続性回復や咬合の変化も認めた.【顎咬合誌 43(2):114-120,2024

  • 川里 邦夫
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 43 巻 2 号 p. 121-
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    咬合再構成において,上下顎歯列の近遠心的位置関係がアングルII 級では前歯の水平被蓋が過剰,アングルIII 級では不足していることが多く,アンテリアガイダンスの獲得が困難である.アンテリアガイダンスのメカニズムが正常に働き,側方運動時に臼歯部にディスクルージョンをもたらしているか否かは機能を考えるうえできわめて重要である.アンテリアガイダンスが不適切な場合,顎関節への負担や歯の摩耗を引き起こす可能性が高く,歯列全体の長期的維持が望めない1).口腔衛生状態が劣悪な広汎型重度慢性歯周炎を伴った39 歳男性の骨格性II 級症例において,プラークコントロールの顕著な改善を得て戦略的抜歯と補綴歯科治療を併用し,良好なアンテリアガイダンスを伴う機能的で審美的な歯と歯列を獲得できた.【顎咬合誌 43(2):121-131,2024

  • 中島 陽次, 若宮 茂, 井上 英乙
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 43 巻 2 号 p. 132-
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    補綴物の色調を天然歯に合わせるためには,歯の構造を模倣することはもちろん,色の三属性である明度(value),彩度(chroma),色相(hue)を合わせる必要がある.色は光が物体に入射して吸収,反射,散乱もしくは透過し,ヒトはそれを色として知覚するが,その見え方は,明度,彩度,色相が相互に関連し特定の色として確認される1).特に明度は視覚的に容易に識別することが可能なため注意が必要である.それら複雑な色調をシェードデータから読み取るのは非常に困難であり,製作者の経験,技術に頼らざるを得ない.しかし,近年,これらの問題を解決すべく天然歯の色調に対してシェードを選ばないユニバーサルシェードの歯科充塡用コンポジットレジンが発売され,注目を浴びている.本来,歯科充塡用コンポジットレジンは直接法を想定しているが,間接法にて従来のCR インレーと同じ方法で製作しても問題ない色調再現性が得られたため,その結果を報告する.【顎咬合誌 43(2):132-137,2024

  • 道上 隆史
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 43 巻 2 号 p. 138-
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    歯根破折など,抜歯に至るようなインプラント隣接歯のトラブルは,その後の口腔機能回復を困難にすることが 多い.インプラントに隣接する歯が欠損したとき,インプラントと天然歯の連結は推奨されていないため,一般的にはインプラントの追加埋入,上部構造の再製作(カンチレバー),局部床義歯などから処置法を選択することになるが,今回,前歯部補綴物の離開を主訴に来院し,3 の歯肉縁下での破折と,2 の歯肉縁上での破折とう蝕を認める68 歳の男性患者に対し,3 2 の矯正的挺出・抜歯とともに3 抜歯窩へ2 を移植し,2 の抜歯窩に3 の歯根の一部を移植し,生着した後に修復し,歯列の連続性を回復した.【顎咬合誌 43(2):138-143,2024

  • 菱川 梓
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 43 巻 2 号 p. 144-
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    44 歳の女性の歯科恐怖症患者について,患者のナラティブを重視して診療を進め,歯周治療から安定したSPT に移行した 症例である.患者は,前歯が自然脱落しそうな状態にもかかわらず歯科治療に対する恐怖心から永年にわたって歯科受診を避けてきた.患者の訴えから歯に強い劣等感をもち,治療が必要だと自覚しながら歯科受診を避けてきた歯科恐怖症と判断した.初診時は極度の緊張状態にあり,自分から言葉を口に出すことはなく,恥ずかしさで話すのも苦しそうだったが,6 回の歯周基本治療のプロセスで,次第に緊張が解け,患者のアイコンタクト,自発的な会話,話す速さや声の大きさが徐々に変化した.それに伴ってプラークコントロールが顕著に改善するとともに,歯周外科への移行が可能になった.筆者は,ナラティブを重視した治療の進め方やノンバーバルなコミュニケーションの重要性とともに,患者を尊重する姿勢によって患者の信頼を得ることの重要性を教えられた.【顎咬合誌 43(2):144-150,2024

  • 鈴木 宏樹, 松村 香織
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 43 巻 2 号 p. 151-
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    義歯不適合を主訴として来院した高齢患者に対し,口腔機能に配慮した義歯作製を行うことで良好な結果を得たので報告する.症例は 81 歳の女性.義歯不適合および食事摂取困難を主訴に来院した.2015 年に上顎部分床義歯および下顎全部床義歯を作製し,以後問題なく使用していたが,徐々に義歯が不適合となり食事摂取に支障をきたすようになったため当院を受診した.下顎の全部床義歯は維持安定不良であり,口腔機能低下症検査では口腔衛生状態不良,舌口唇運動機能低下,咬合力低下および舌圧低下の 4 項目に該当した.以上より,下顎義歯不適合を伴う口腔機能低下症と診断し,下顎全部床義歯の製作を含む口腔機能管理を実施した.下顎義歯は下唇圧により不安定となっている可能性が高いと判断し,義歯の安定性をはかるためニュートラルゾーンに配慮して下顎前歯の排列を行った.また,舌と下顎義歯舌側粘膜面の間に空隙が生じないよう配慮して床外形を設定した.新義歯装着後に口腔機能精密検査の再評価を行ったところすべての検査項目で検査値が改善し,良好な結果が得られた.【顎咬合誌 43(2):151-155,2024

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