日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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最新号
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総説
  • 里見 貴史
    原稿種別: 総説
    2025 年45 巻2 号 p. 131-140
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    顎関節症は,日常生活を含む環境因子,行動因子,宿主因子,時間的因子といった複数の要因が複雑に関与し,それらが累積的に作用して個体の生理的耐性を超えた場合に発症すると考えられている.そのため,医療面接(病歴聴取),身体診察,ならびに各種検査結果に基づいて個々の患者における複数のリスク因子を的確に推定し,総合的に判断して正確に診断することが極めて重要である.顎関節症の治療においては,まず患者さんに病態の説明と疾患教育を行い,治療者側が提供する治療のみならず患者自身による悪習癖の修正や生活指導を含むセルフケアの重要性について理解を促す必要がある.顎関節症は,その病態がある程度まで進行した後,徐々に自然寛解していく傾向を示す比較的経過良好な疾患である.このような特徴からも侵襲的かつ不可逆的な治療,たとえば咬合治療などは原則として行うべきではなく,初期治療には理学療法,薬物療法,アプライアンス療法を中心とした保存的かつ可逆的な治療を行うことが推奨されている.
原著
  • 飯塚 慎也, 稲熊 智, 長屋 亮, 松岡 力
    原稿種別: 原著
    2025 年45 巻2 号 p. 141-151
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    我々が下顎の運動機能を診断するときは,開閉口運動や各種の偏心運動の診察と検査を行う.そして診断から計画される治療内容によっては,上下顎の顎間関係や咬合器の調節機構へ運動要素の情報の転送及び顎口腔機能の状態を知るために,下顎運動検査あるいは相補下顎運動検査を行うことがある.下顎運動検査における顆路の測定について思索した.矢状面前方顆路傾斜角は,臼歯部の咬頭の高さや前歯部の矢状面切歯路角と深い関わりをもつ.そのため顎口腔機能と調和した咬合の構築には,考慮するべき項目である.従来,下顎運動の測定には,下顎頭運動経路測定装置を用いることが多い.そしてこの装置を用いるときは,LowerFacebow を下顎に固定するために,通常は下顎歯列に計測用のトレー型のクラッチを用いる.しかし,この歯列に装着するトレー型のクラッチの厚みによっては,下顎頭が偏位した状態からの下顎運動となるため,測定から得られた情報の誤差について考えた.そこで筆者らは,複数の被験者を集め,トレー型のクラッチを用いた場合と用いなかった場合の下顎頭運動経路測定装置を用いた矢状面前方顆路傾斜角度を測定し,併せて顎関節エックス線規格撮影を行った.本調査による矢状面前方顆路傾斜角の計測結果と下顎頭の位置について考察を行った.
  • 疋田 涼, 長田 耕一郎, 西田 哲也, 藤井 元宏, 河原 英雄
    原稿種別: 原著
    2025 年45 巻2 号 p. 152-158
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    本研究は, 3D プリンター技術を応用した新たなデジタル総義歯の作成方法の臨床的有用性を,多施設共同研究として包括的に検討したものである.対象は上下無歯顎患者38 名とし,Barthel Index(BI),OHIP-EDENT-J,EQ-5D-5L を用いて,術前,術直後,1 カ月,3 カ月,6 カ月の各時点で評価を行った.義歯はCAD による設計後,3Dプリンターで高精度に造形した床用材料と既製フルアーチ人工歯列を組み合わせて製作した.結果として,BI では統計学的有意差は認められなかったが,日常生活動作は維持され,高齢患者の生活自立度に悪影響を及ぼさないことが確認された.OHIP-EDENT-J では術前と比較して1 カ月および6 カ月で有意な改善が得られ,特に機能的制限,心理的不快,ハンディキャップの領域において顕著な効果がみられ,患者の心理社会的側面に大きく寄与した.EQ-5D-5L でも短期的に全身的健康関連QOL の改善が示され,義歯治療が口腔領域にとどまらず全身的な健康感にも影響を及ぼす可能性が示唆された.さらに,本研究で用いた3D プリンターと既製フルアーチ人工歯列を用いた技術は,従来法に比べて製作精度の向上,工程の効率化,製作時間の短縮を可能とし,歯科技工士不足が懸念される現状において人的資源の効率的活用にも貢献し得る.これらの成果は,3D プリンターを用いた新しい義歯製作法が従来法と同等以上の機能的安定性と耐久性を有し,患者満足度の向上と社会的課題の解決の双方に資する有効な治療選択肢であることを示している.
症例報告
  • 野村 陽介
    原稿種別: 症例報告
    2025 年45 巻2 号 p. 159-165
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    昨今の歯科におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は目覚ましいものがあり,ジルコニアやオールセラミックスなどのモノリシック素材を用いた修復をCAD/CAM で作製する補綴治療や,インビザラインなどのマウスピース矯正において歯科医院内で口腔内スキャナー(intoraoral scanner 以下IOS)を使用することがかなり普及してきている.当院でも2020 年にプライムスキャン(dentsply sirona)を導入して,CAD/CAM を使用した補綴修復は従来のシリコーン連合印象からIOS を用いた光学印象へとシフトしている.今回は日常の補綴修復でIOS をどのように使用しているかを症例を通して提示し,その有用性について報告する.
  • 藪 健一郎, 吉田 和英
    原稿種別: 症例報告
    2025 年45 巻2 号 p. 166-172
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    オーバーデンチャーを装着している高齢患者が口腔機能低下症を発症し,舌機能トレーニングを行うことで良好な結果を得たので報告する.本症例は,上顎オーバーデンチャーおよび下顎インプラントオーバーデンチャーを装着し,以後問題なく使用していたが,装着から3 年半後に口腔機能低下症を発症した.口腔機能低下症検査では,口腔衛生不良,口腔乾燥,咬合力低下,舌口唇運動機能低下,および舌圧低下の5 項目が該当した.そこで口腔機能低下症と診断し,舌機能トレーニングを含む口腔機能管理を実施した.低下していた舌圧は舌機能トレーニングにより回復し,1 年後の口腔機能検査の再評価を行ったところ検査数値が改善し,良好な結果が得られた.
  • 北逵 圭佑
    原稿種別: 症例報告
    2025 年45 巻2 号 p. 173-184
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    近年,日常の臨床で,患者の審美的な要求は高まっており,特に前歯部の治療は患者の審美的な満足度に直結すると考える.我々が歯科治療を行う際,治療対象となる歯だけに注視しがちであるが,歯だけに捉われると顔貌レベルでの審美改善の失敗を招きかねない.顔貌と口腔内の正中線,スマイルライン,口唇と前歯の関係,咬合平面など様々なこと考慮して治療を行う必要があると考える.前歯部の審美不良を主訴に来院された患者に対し,口腔内・口腔外の基礎資料収集により診査・診断を行なった.診断用ワックスアップを基に,歯科技工士とディスカッションを行い,最小限の侵襲でラミネートベニアによる治療を行い,診断用ワックスアップを基に治療を行うことで,患者と最終の治療ゴールを共有し,結果として患者の満足のいく治療を行うことができたと考える.
  • 安斉 昌照
    原稿種別: 症例報告
    2025 年45 巻2 号 p. 185-190
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    【目的】CEJ を超えて垂直的な形成を行い,歯根面上にマージンを設定し,さらに歯肉の意図的クリーピングが得られるBOPT は審美修復に対して優位性が高く,新たな歯冠形成法として2013 年に報告された.【材料および方法】症例1:58 歳女性,審美障害を主訴に来院した.歯肉退縮によって出現したブラックマージンを呈する歯に対して,BOPT を行うことで歯肉の意図的クリーピングによる歯肉辺縁の歯冠側移動を促した.さらに顕著なブラックトライアングルが出現している部位に対して上顎結節部の結合組織を用いた歯間乳頭再建術をおこない,プロビジョナルレストレーションにて審美的な調和が得られたのち最終修復をおこなった.症例2:36 歳女性,前歯部ブリッジの歯肉退縮を主訴に来院した.前医で行ったフラップ手術による顕著な歯肉退縮を呈していたため,ブリッジの支台歯に対してBOPT をおこない,歯肉の歯冠側移動を図った.また,ポンティック部ではプロビジョナルレストレーションにてオベイト(ovate)ポンティック形態を形成したことにより,良好な歯肉形態の連続性が確立できたため,最終修復を行った.【結果】2 症例とも最小限の治療介入で審美的な軟組織マネジメントが可能であり,患者の満足は高く,長期的に審美的に良好な結果が得られた.【結語】BOPT は相対的な歯肉の厚みを増すことができ,さらに軟組織のリモデリングを意図的に起こすことにより,長期的な歯肉の安定が得られる.そのため,審美修復に対して非常に有用なテクニックである.
  • 太田 理香
    2025 年45 巻2 号 p. 191-198
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    全顎的な治療を行う上で,適切なアンテリアガイダンスと臼歯部のディスクルージョンが確立できているか否かは重要な事項である.本症例では,咬合痛がみとめられた歯に対し,疼痛の原因は臼歯部の咬合干渉による負担加重と考え,アライナーにて全顎矯正を行い,適切な咬合関係を獲得した後,補綴治療を行った.その結果,主訴の咬合痛は消失し,補綴形態は機能的にも審美的にも良好となった.
  • 植草 智史
    2025 年45 巻2 号 p. 199-205
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    患者は初診時30 歳の女性, 6 部歯肉に腫脹を訴えながらも,その歯を「残してほしい」ということで当院に来院した.治療歴は約1 年前患歯が痛くなり,近医にて根管治療を行い補綴まで行った.患歯を精査すると,エックス線写真からは,クラウンの適合はよく,近心根の根管外にシーラーか根管充塡材と思われる不透過性物質の漏出と根尖から内側へ向かう透過像が認められた.また,限局的に7mm と歯周ポケットもあることから破折や穿孔の可能性も考えられた.まず,感染根管治療を行い,近心根が治らないようであれば,外科的対応を検討することにした.治療の過程で,頰舌側近心根内側にそれぞれ1 カ所計2 カ所の穿孔が認められ,穿孔外には根管充塡材が存在していた.感染の除去と封鎖を行ったが,穿孔部の感染や穿孔外の根管充塡材を除去するのに苦慮した.特に,穿孔外の根管充塡材が軟組織もあり動いてしまうため,引っ掛かりにくく先端が矢尻状形態をしたTGR で引っ掛けて除去できた.結果的に,透過像も縮小し,歯槽硬線も認められプロービングポケット値も正常値になり良好な経過が得られた.
  • 藤井 元宏, 藤井 みずき
    2025 年45 巻2 号 p. 206-210
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    訪問診療では患者の負担ができるだけ少ない診察が求められる.このため義歯の調整においては,義歯を咬合器にマウントして人工歯を咬合調整する方法(義歯リマウント調整法)が,咀嚼機能の改善に効果的である.本症例では,訪問診療先において義歯リマウント調整法を用いて,咀嚼機能の改善を達成した高齢者の 1 例を報告する.多くの訪問施設において,適合不良の義歯により咀嚼困難な状態が放置されている現状がある.本症例では,義歯リマウントした調整を咬合器上で行うことで,咀嚼機能の改善が迅速に得られたことを示し,さらに訪問診療における本法の有用性を考察する.
報告
  • 俵木 勉
    原稿種別: 報告
    2025 年45 巻2 号 p. 211-216
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    「かめていない」ことに気づく.「かめない」苦労を思いやる.「かめない」原因を解消する.まず,かめるようにすることをモットーとしている河原英雄が提唱する「リマウント調整法」は,50 年以上前にA.G. ローリッツェンから伝授された術式を,誰もが容易に行える総義歯調整法として簡略化したものである.その研修に参加した歯科医療関係者は約2700 名に達し,まず「かめる」入れ歯にすることを日々診察室で実践して多くの成果をあげている.さらに,河原が国際医療福祉大学大学院教授の竹内孝仁との交流を得ることにより「リマウント調整法」を行う場が高齢者施設,患者の居宅へと広がっている.今回,日本顎咬合学会への依頼があり,参加者を募り「食べる喜び助け隊」を組織して東京都中野区にある高齢者施設に訪問し,「リマウント調整法」を実践した.5 年経過した現在でも,会員が訪問し,入居者を見守っている.
特別寄稿
  • 二宮 嘉昭
    原稿種別: 特別寄稿
    2025 年45 巻2 号 p. 217-221
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/01/08
    ジャーナル フリー
    近年,歯科インプラントの治療症例数は確実に増加している.今回我々は,経過不良インプラント症例を対象として臨床的検討を行ったので報告する.対象は2006 年1 月~ 2022 年12 月の17 年間,他院でインプラント治療を行い広島大学病院口腔顎顔面再建外科外来を受診した経過不良インプラント症例198 例とし,①既往歴,②性別・年齢,③年度別来院患者数,④来院経路,⑤経過不良症例の内訳,⑥撤去症例の補綴様式,⑦当科での処置内容,⑧インプラント周囲炎撤去患者の性別・年齢分布の8 項目について検討した.既往歴は高血圧症が28 例と最も多かった.年齢は26 歳から91歳で平均65.9 歳で,男性73 例,女性125 例であった.年度別来院患者数は2018 年が27 例と最も多く,来院経路は歯科医院が115 例,当院歯科が65 例,経過不良症例の内訳では,インプラント周囲炎が149 例,インプラント体破折が21 例,撤去症例の補綴様式では,左側上顎臼歯部連結冠が21 例,左側下顎臼歯部連結冠が21 例であった.当科での処置内容は,インプラント体の撤去が110 例と最も多かった. インプラント周囲炎撤去患者の性別・年齢分布では,60 歳以上の女性に集中していた.
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