日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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最新号
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総説
  • 菅谷 勉
    原稿種別: 総説
    2024 年 44 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2024/08/26
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    垂直歯根破折の診断や治療,予防法を明らかにしていくことは,咬合を確保し口腔機能を維持するためにはきわめて重要である.垂直歯根破折は歯頸部から生じて根尖側に伸展していく場合と,根尖部から発生して歯冠側に広がっていく場合があり,その頻度はおおむね同等である.また,垂直歯根破折は,根管と破折間隙から細菌を取り除いて封鎖することと,再破折を防ぐことが主な治療法となる.治療後の予後は術前の歯周組織破壊の程度や築造をはじめとする補綴方法,負荷される咬合力によって大きな影響を受け,歯周組織破壊が生じる前に治療を開始できた症例では,10 年後の生存率が90%を超えており,垂直歯根破折は症例によっては十分に保存治療の適応と考えられる.【顎咬合誌 44(1):5-13,2024

  • 中等度以上の歯周炎患者に対する欠損補綴について
    五十嵐 順正
    原稿種別: 総説
    2024 年 44 巻 1 号 p. 16-26
    発行日: 2024/08/26
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    6 年ごとに実施される歯科疾患実態調査によれば近年,調査対象者の半数を越える達成率が示された.その一方,高齢 者では歯周ポケットが4 mm 以上のものは半数を超えるという.歯科を受診する「歯列欠損患者」および予備群への治療必要性は決して減少したわけではない.歯列欠損患者の成因の多くは歯周疾患であり,歯周治療が一応終了してもその病因傾向は持続すると思われる.したがって,歯列欠損患者の補綴治療には歯周病再発への予防策,すなわち病因となるプラークのコントロールが容易な補綴装置の設計・製作・保守(メインテナンス)が望まれる.今回の特集は種々な補綴装置の設計について,以上の観点から臨床家各位に検討いただいた.【顎咬合誌 44(1):16-26,2024

特別寄稿
  • ―― 臨床医のために
    窪木 拓男
    原稿種別: 特別寄稿
    2024 年 44 巻 1 号 p. 27-45
    発行日: 2024/08/26
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    顎関節症とくに顎関節円板障害について,臨床研究を踏まえた診断と治療にかかわる考え方を述べた.EBM の浸透によって1990 年代初頭に医学研究の方法論に大転換がもたらされ,顎関節症の診断と治療は,その影響を強く受けた.筆者の一学徒としての歩みを交えて,その転換について述べるとともに各種治療法の臨床成績と自然経過を概説し,顎関節症が時間経過とともに症状が緩和することの多い疾患であることを示した.また,補綴的な要求から咬合位を改変しなければならない場合に,治療介入がもたらすリスクについて,スプリントの装着が関節空隙にもたらす変化に着目し,ファーラー(Farrar & McCarty, 1982)の顎関節症の病態の分類に即した咬合挙上の許容度について解説した.とくに一般歯科臨床医が補綴的に咬合位を変更する際の,顎関節症の診断と介入の適否について述べた. 【顎咬合誌 44(1):27-45,2024

  • 相澤 正之
    原稿種別: 特別寄稿
    2024 年 44 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2024/08/26
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    患者の満足を得た上下無歯顎患者に対する総義歯製作症例を通して,印象採得,咬合採得,試適時の歯科医師と歯科技工士の連携について述べる.総義歯製作における歯科医師と歯科技工士の役割分担は法律上の取り決めにより,歯科医師が検査,診断,印象採得,咬合採得,設計,指示,歯科技工士が歯科医師と共有した情報および与えられた条件下において人工歯排列,歯肉形成,重合,咬合調整を行うのが一般的である.まず下顎の印象採得では,患者の機能運動を利用した辺縁形成後,頰小帯,モダイオラス部研磨面まで含む3 次元的トリミングと舌側床縁S 字カーブのくびれを誇張した床縁内外のトリミングが重要である.また印象後の転覆試験や咬合採得における印象との3次元的一体化は排列位置の情報となる.排列や歯肉形成に関する情報量が豊富であれば,高機能な義歯の製作につながる.試適時には,まず設定された咬合平面の確認を行うが,発音への支障や咀嚼時の頰舌の生理的協調運動を円滑にするため,左右同高で安静時の舌背よりやや低い高さを指標としている. 【顎咬合誌 44(1):46-51,2024

原著
  • 鈴木 一, 川原 大, 黒岩 昭弘
    原稿種別: 原著
    2024 年 44 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2024/08/26
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    インプラントオーバーデンチャー(IOD)で補綴されたアイヒナーC 分類のうち無歯顎症例クラスC2 およびC3 の112 症例の累積生存率を上下顎別および男女別にKaplan Meier 法とlog-Lank test にて分析した.累積生存率(CSR) は,IOD 上部構造装着後からインプラント周囲炎またはインプラント破断によるインプラント除去までの日数から計算した.女性は男性よりも高いCSR を示し,下顎のIOD は上顎よりも高いCSR をそれぞれ示した.一方,アイヒナーサブクラスC3 は,C2 よりも高いCSR を示した.C3 の男女比較でも,男性よりも女性のCSR が高く,上顎よりも下顎のCSR が高い傾向が示された.今後さらに対顎の欠損形態や補綴装置のデザインなどの多様性をふまえた長期的な調査の必要性が求められる.【顎咬合誌 44(1):52-57,2024

症例報告
  • —歯科衛生士の役割について—
    和田 香織, 和田 義行
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 44 巻 1 号 p. 58-70
    発行日: 2024/08/26
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    近年,歯科衛生士の業務は高齢社会の進展や疾病構造の変化に伴い多様化してきている.中でも口腔インプラント治療は急速に普及・発展している.そして治療技術の進歩,治療計画や診断における諸検査の充実,患者の主観的評価の重要性により歯科衛生士の役割は多岐にわたっている.著者らは,インプラント治療は患者,スタッフ,術者の共同作業であると考えている.そして新時代のインプラント治療において術前の情報収集や患者への説明に新しい知識を持った歯科衛生士の活躍が期待されている.本2 症例においてインプラント治療に必要な補綴関連検査などの客観的情報や患者報告アウトカムなどの主観的情報の収集に歯科衛生士が積極的にかかわった.そして歯科衛生士が治療の意思決定に参加することにより患者・歯科医師・スタッフ間での認識の共有がスムーズに行うことができた.さらに検査結果や得られた情報を数字や図で患者に提示することにより,患者自身も気づかない問題点が抽出された.さらに患者との良好なコミュニケーションと意思決定の共有(shared decision making) が構築されインプラント治療はより充実したものになった.これらの役割は歯科衛生士にしかできない重要な仕事であると考える.【顎咬合誌 44(1):58-70,2024

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