日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 隅田 由香
    原稿種別: 総説
    2026 年45 巻3 号 p. 301-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/23
    ジャーナル フリー
    日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えており,健康寿命の延伸は喫緊の課題である.近年,「オーラルフレイル」という概念が普及し,口腔機能の低下が全身の虚弱化に先行することが示されてきた.その中で,咬合支持の維持などの補綴介入は,オーラルフレイル予防における重要な要素とされている.本稿では,歯の喪失に伴う一次性,二次性,三次性の障害を整理し,負の連鎖を断ち切る補綴治療の意義を残存組織保護の観点から論じる.歯科補綴治療の介入による咬合支持の維持は,咬合接触面積の増加による咬合力の向上のみならず,嚥下機能の維持やオーラルフレイル予防を通じ,健康寿命延伸に寄与することが明らかとなってきた.本稿では,現代社会における歯科医師の役割を改めて整理する.
原著
  • 沖本 悠美
    原稿種別: 原著
    2026 年45 巻3 号 p. 307-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/23
    ジャーナル フリー
    背景:アクセルソンらによって提唱されたプロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング(PMTC)は,サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー(SPT)の重要な構成要素とみなされてきた.PMTC を含む長期予防プログラムは歯の喪失減少と関連しているが,日常的な臨床現場において異なる清掃法(PMTC と保険適用スケーリングおよび歯面研磨)を比較したデータは限られている.目的:本後ろ向きコホート研究の目的は,長期メインテナンス期間中に一貫してPMTC とエアポリッシングの併用を選択した患者群と,保険適用スケーリング・ポリッシングを選択した患者群の間で,歯の喪失数および新規治療歯数を比較することである.方法:本単施設後ろ向きコホート研究には,基礎的歯周治療を完了し5 年以上にわたりメインテナンス管理を継続した10 名の患者が対象となった.5 名は一貫してPMTC とエアポリッシング(PMTC 群),5 名は一貫して保険適用クリーニング(保険群)を受けた.主要アウトカムは臨床記録とX 線データから算出した年間平均歯喪失数および新規治療歯数である.サンプルサイズが小さいため,記述統計のみを実施した.結果:PMTC 群の年間平均歯喪失数は0.08 歯,保険適用クリーニング群は0.18 歯であった.新規治療歯の年間平均数はPMTC 群で0.17 歯,保険適用クリーニング群で0.81 歯であった.記述統計上,PMTC 群では歯の喪失と修復処置がより少ないことが観察された.結論:この小規模な後ろ向きコホート研究では,エアポリッシングを併用したPMTC を継続的に受けた患者は,保険適用クリーニングを受けた患者と比較して,歯の喪失および新規治療歯数が少なかった.本探索的研究では潜在的な交絡因子を制御しておらず,統計的検定も実施していないため,因果関係は確立できない.さらなる前向きかつ大規模な研究が必要である.
  • 細野 隆也
    原稿種別: 原著
    2026 年45 巻3 号 p. 316-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/23
    ジャーナル フリー
    目的:現在頻用されている骨吸収活性測定法は,骨組織からのCa2+ 放出量を測るものではないため,直接の骨吸収を測っているとはいえない.本稿では,頭蓋骨片からのCa2+ 放出量を直接測定する骨吸収活性測定法を試みた過去の論文について考察を行った.方法:1991 年千葉大学学位論文リポジトリのデータにて,当時すでに用いられていた骨組織からのCa2+ 放出量を測る骨吸収活性測定法(従来法)とそれを簡便化した測定法(簡便法)の比較を行っている.簡便法とは,頭蓋冠の調整までは従来法に習って行い,さらにこの頭蓋冠をはさみで細かく裁断し,滅菌ステンレスメッシュ(孔径約0.5mm)上ですりこぎを使って骨を摩砕して得られた摩砕片を含めた懸濁液を作成し,これを培養して測定するものである.結果:骨吸収活性測定の経時的変化を追ったところ,従来法では66 時間にて[45Ca]-Ca2+ の放出量が最高値となるが各測定値はばらつきが多く,測定値が高い程その傾向が強かった.これに対し,簡便法では25 時間にて最高値に達し,その後減退していった.高い測定値においてもばらつきは少なかった.骨吸収活性を示す各種ホルモン,サイトカインのそれぞれ至適な濃度のものについても従来法との比較を行い,両者の相関関係を認めた.考察:骨組織を摩砕しこの懸濁液を作成する簡便法にて,組織培養において大きく生じる誤差を少なくすることが可能であることがわかった.結論:簡便法は従来法と同様に骨吸収活性を測定でき,短時間での測定を可能とし,実験動物の数も少なくできるものであった.
  • 洞沢 功子, 都筑 孝也, 黒岩 寧々, 伊比 篤, 米田 隆紀, 黒岩 昭弘
    原稿種別: 原著
    2026 年45 巻3 号 p. 325-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/23
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,チタンの耐食性への加工方法の影響を明らかにすることである.試料は鋳造とインゴットのフライス加工で作製した.浸漬試験は,JIS の耐食性試験法に順じ,乳酸,塩化ナトリウム,人工唾液の3 種類の浸漬溶液を用いた.チタンの耐食性は,CP-MS による浸漬溶液中への溶出元素量の定量分析と浸漬試料表面の色差( Δ E*ab) にて評価した.鋳造チタンからの溶出元素量と色差の値は低かった.その結果,他の歯科合金での腐食挙動とは対照的に,鋳造チタンがフライス加工に比べて優れた耐食性を示した.以上の結果からチタンにおいては,鋳造がCAD/CAM フライス加工と比べ電気化学的安定性を向上させるという結論が得られた.
  • —誤嚥性肺炎リスク評価を重視した口腔ケア支援の取り組み
    今井 美恵
    原稿種別: 原著
    2026 年45 巻3 号 p. 330-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,福岡市の特別養護老人ホームにおいて実施された,多職種連携による口腔健康管理の取り組みについて報告するものである.本取り組みは,入所者個々の誤嚥性肺炎リスクに基づいた個別的口腔ケアの実践を通じ,誤嚥性肺炎の予防を目的として導入された.隣接する医療機関に所属する歯科医師および歯科衛生士と,施設の看護師・介護職員とが参加する「歯科連携会議」が月1 回開催され,介護職員による評価表に基づき,入所者ごとの支援計画について具体的な事実に基づくフィードバックと支援方法の調整が繰り返し行われた.評価項目は,①全身状態,②口腔状態,③食事摂取状況,④口腔ケア方法の4 つの領域から構成されており,これに基づいて歯科専門職が個別性に配慮した支援指導を実施した.介入は単に口腔衛生の維持にとどまらず,嚥下機能,食事行動,栄養摂取にも焦点を当てたものであった.口腔ケア支援を継続することで,誤嚥性肺炎の発症が減少しただけでなく,体重減少リスクも軽減された.さらに,入院件数および施設の空床率の有意な低下が確認された.特に,空床数の減少傾向は介入開始から約1 年半後に顕著となり,2 年目には2019 ~ 2022 年度同時期の平均と比較して,施設の空床が第2 四半期で75.5%,第3 四半期で66.2%,第4 四半期で33.3%減少した.本事例は,個別リスク評価に基づいた歯科専門職との多職種連携が,臨床的成果のみならず,施設運営面にも好影響をもたらす可能性を示唆している.
症例報告
  • 石田 智毅, 山野 賢人
    原稿種別: 症例報告
    2026 年45 巻3 号 p. 337-
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/23
    ジャーナル フリー
    目的:無歯顎症例では下顎位が不安定になりやすく,下顎位を客観的に確認できるゴシックアーチ描記法が有効である.近年,現義歯をデジタルスキャナー(光学スキャナ―,歯科用コーンビームCTなど)でスキャンし,ミリングマシーンや3Dプリンターを用いてデジタル複製義歯を製作することができるようになった.適合性の高いデジタル複製義歯を用いてゴシックアーチ描記装置を製作したところ,従来法と比較して様々なメリットが得られたため報告する.症例:入れ歯が割れたことを主訴として来院した64 歳男性.5 年以上前に上下顎全部床義歯を製作して使用していた.約2 カ月前に下顎義歯が破損したため患者自身で接着剤で修理をして使用していたが,硬いものが噛めないため上下顎義歯を新製したいとの希望で当院を受診した.上下顎全部床義歯不適合による咀嚼障害と診断し,主訴改善のための応急処置として上下顎義歯を新製した.しかし,下顎義歯の安定が得られなかったためこれを治療用義歯として調整し,下顎義歯の安定が得られたのちに最終補綴治療を行った.最終補綴治療の過程で,調整が済んだ治療用義歯の3 次元形状を口腔内スキャナーを用いて採得し,そのデータをCAD ソフトで調整した後,3D プリンターで造形した複製義歯(デジタル複製義歯)を用いてゴシックアーチ描記装置を製作して使用した.結論:口腔内で安定している治療用義歯をスキャンして製作したデジタル複製義歯を用いることで,短期間かつ簡便に安定したゴシックアーチ描記装置を製作することができた.デジタル複製義歯を用いて製作したゴシックアーチ描記装置による診査は咬合床を用いた従来式と比較して有用性が高いと考えられる.
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