2023 年 42 巻 3 号 p. 323-330
我が国の医療において,世界的に見ても先進的に取り組まれているのが再生医療である.一方,歯科医療では,従来の修復・補綴治療に比べると,再生医療は近寄りがたいワードである.興味はあるのに敬遠されてきた理由は,次々と開発される再生医療の急速な発展と,それをとりまく法律の整備であろう.歯学部を卒業した私は,8 年間の歯科臨床を経て,母校の大学院博士課程に進学した.そこで幹細胞に魅せられて基礎研究に没頭し,晴れて博士号を取得した.そして今では,大学に在籍して幹細胞研究を継続するかたわら,組織発生学と再生医学を教授する学生教育,そして変わらず歯科臨床にも携わっている.そのなかで,再生医療を身近にするために心掛けているのは,再生医療の普及に向けた歯科特有ともいえるデメリットの克服である.本稿では,歯科医師として様々な立場で再生医療に関わる私が,再生医療を“当たりまえ”の医療にするために考案した3 つのアプローチについて紹介し,未来の歯科医療のさらなる可能性を提起したい.