日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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原著
純チタンと組織界面の反応
―純金とチタンの生体適合性について―
洞沢 功子井上 義久黒岩 昭弘
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2023 年 42 巻 3 号 p. 337-348

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抄録

本研究の目的は,組織と純チタンの界面における反応を明らかにすることであり,その手始めに細胞接着性タンパク質のフィブリノーゲン(HFG)とフィブロネクチン(HFN)の純チタンおよび純金への吸着挙動を比較検討した.金属表面へのタンパク質の吸着量を測定し,吸脱着試験後の金属表面を原子間力顕微鏡にて表面観察した.金属表面に吸着したタンパク質のコンフォメイション変化は,フーリエ変換赤外分光光度計にて測定した.その結果,2種類のタンパク質の吸着量は,純金よりも純チタンの方が多かった.タンパク質は,いくつかのステップで金属表面に吸着し,HFGとHFNは主に物理吸着によって純金に吸着した.しかし純チタンへは化学吸着によって吸着し,チタンと化学結合したと考えられる.さらに両タンパク質のコンフォメイション変化は,純金よりも純チタンの方が大きかった.金属への細胞接着性タンパク質の初期吸着挙動は,口腔内での生体適合性を決定する上で重要な要因である.このデータは,新しい生体活性な歯科用インプラントを開発する上で有用となる.

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© 2023 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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