抄録
慢性関節リウマチ (以下RA) は, 関節周囲組織さらに皮下組織, 心血管, 肺, 脾, 骨格筋などに非化膿性の慢性関節炎を主症状とする広く全身の結合組織を侵す自己免疫応答が関与した膠原病のひとつである.RAは特に手や足の関節あるいは頸部などを中心に運動機能障害と強い痛みが出現することで良く知られているが, 顎関節に関しては口腔内のさまざまな要素が複雑に絡み合うため, この分野の研究は決して多くはない.著者らはリウマチの専門診療科を持つ沢渡温泉病院におけるリウマチ患者の歯科治療において, リウマチが原因していると思われる顎関節機能障害を持った患者に多く遭遇した.そこで, RAと顎関節機能障害の関係, あるいは歯科的見地に立った両者の診断を, 特に原因の明確であった症例をとおし報告し, 加え, 現在のRA患者の顎関節機能障害に対する治療方法の現状を考察したい.