2000 年 21 巻 2 号 p. 232-236
近年, 歯科治療において保存的療法を中心に目覚ましい発展をとげている.そのような中, 歯髄保護の重要性が叫ばれ, 覆髄材の開発も注目されている.一見何気ない線維性結合組織にみえる歯髄であるが, 実は細胞機能的にも発生学的にも大変興味深い組織であり, 他の結合組織とは異なる.細胞生物学的な観点からも歯髄疾患の治療を分析するとなかなか奥深いものがある.そこで今回は, 日常臨床において取り扱う歯髄組織を改めて細胞レベルで見直し, 歯髄保護を細胞生物学的にとらえるために, 歯髄の発生, 細胞機能, そして各種増殖因子の作用について, われわれの研究結果とあわせて解説する.