抄録
本稿では、米国史上初の黒人大統領となったバラク・オバマの2008年民主党大統領候補者指名争いにおける演説を分析する。特に予備選挙初期のいくつかの演説を題材としながら、オバマがどのようにして年齢、性別、人種の異なる多数のアメリカ人たちの心を一様に掴み、彼らの支持を獲得していったのかを描写する。分析の結果、「民衆を主体とした政治」、「個人的逸話の多用」、「分断から統一へ」という 3つの主題が浮かび上がった。これらの主題を中心に、オバマがその演説をとおしてアメリカ国民を説得していく過程を記述する。稿を閉じるにあたり、オバマの演説は「分断の言説」を回避し、文化的差異について語るもう一つの仕方をアメリカ人たちに提示していると結論する。