抄録
本研究は,就学前の発達障害児とその保護者に対する保健師の支援技術を,支援の開始から保護者の障害受容までの支援に焦点を当てて構造的に明確にすることを目的に,面接調査を実施した.研究協力者は,発達障害者支援センターを設置している都道府県にある市区町村に勤務し,発達障害児の家族に対する支援経験が豊富な保健師8名である.調査方法は,過去5年間に支援を行った発達障害児1例の支援経過を想起してもらい,ケースの背景,就学までの支援内容を語ってもらった.分析の結果,保健師が発達障害児とその家族に対して行っている支援技術は,〔支援の必要性を見極める支援〕〔継続的な支援〕〔子どもの成長発達を促す支援〕〔乳幼児健康診査で配慮する支援〕〔保護者と問題を共有し診断につなぐ支援〕〔保護者の受容を支える支援〕の6つのカテゴリーが導かれた.保健師の支援の特徴としては,1.発達障害の特徴を捉える,2.保護者との信頼関係を損なわずに支援の場につなぐ,3.子どもの問題に対する保護者の認識を深め診断につなぐ,4.揺れ動く保護者を見守り受容過程を支える,の4つが示唆された.