抄録
目的:保健師に男性への門戸が開放され15年以上経過したが,男性保健師については研究が行われていないのが現状である.そこで本研究の目的は,男性保健師が性別と関係づけている職業上の経験を明らかにすることである.方法:保健師として就業経験をもつ12人の男性保健師を対象に,半構造化面接を実施した.働くうえで男性であることを感じたと話した10人の男性保健師を分析対象とし,経験の変化に着目して,修正版グラウンデッドセオリーアプローチを参考に分析を行った.結果:男性保健師は職業遂行のなかで,仕事のやりにくさ,やりにくさに対する対処的・予防的行動,男性であることの発揮,男性ならではの仕事の仕方の確立などの体験を段階的にすることが示された.またこの展開に伴い,男性保健師が仕事をするうえで,男性であることをどう受け止めているかという性別の認識に変化がみられた.そして,職業を続けていくうえで周囲のサポートなどが助けとなることが語られた.保健師特有の経験として,女性や母子が対象である場合,電話相談,家庭訪問という業務形態で,問題を抱えやすいことが明らかとなった.結論:男性保健師に対する認知の低さや男性の一般的イメージを感じた男性保健師自身の経験が,職業上の問題に影響していると考えられる.男性保健師が職業上の問題に対応し,職業を継続するには,女性保健師の協力が必要であり,男性女性双方の保健師が専門職として協働することが期待される.