目的:保健師による精神障がいをもつ親の育児支援に関する事例報告を質的帰納的に分析し,保健師による支援技術を明らかにする.方法:医学中央雑誌Web版でキーワードを「精神障害」「育児」とし,収録開始の1983年から2012年8月の文献を検索した.行政に所属する保健師が執筆していた7件を本研究の対象文献とした.対象文献に記述されていた13事例について支援内容を抜き出し,支援内容を質的帰納的に分析した.結果:13事例の育児は,すべて精神障がいをもつ母親が主体であり,母親の疾患は,統合失調症が11人,うつ病が2人だった.支援内容を分析した結果,21のサブカテゴリーと6つのカテゴリー《病状の育児への影響を小さくする》《育児能力を家族全体で大きくする》《関係機関の協力を得て,子どもを見守り,育む》《親子いっしょの生活を実現させる》《ひとりの女性としての成長を支える》《地域の育児支援体制に反映させる》を抽出した.カテゴリー間をつなぐ支援技術として1つのコアカテゴリー【病状と育児のバランスを図る】を抽出した.考察:相互作用する【病状と育児のバランスを図る】支援は,《親子いっしょの生活を実現させる》条件だと考えられた.《ひとりの女性としての成長を支える》というリカバリー志向の支援は,障がい者もひとりの住民として支援する,保健師の根本的な価値観によって培われた可能性がある.