日本地域看護学会誌
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Print ISSN : 1346-9657
離島に居住する生活機能低下をきたした独居高齢者の"生活の術"
金城 八津子畑下 博世河田 志帆植村 直子マルティネス 真喜子
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2013 年 16 巻 2 号 p. 63-70

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抄録

目的:離島において,大腿骨骨折術後の生活機能低下をきたした独居高齢者がどのような術で生活を営んでいるのかを明らかにし,看護の役割について示唆を得ることを目的とした.方法:離島に居住する大腿骨骨折術後の独居の後期高齢者8人に対し,対象者の自宅に宿泊し寝食を共にし,レイニンガーの「見知らぬ人-友人モデル」により,十分な人間関係が築けたと判断したのちにエスノグラフィーを用いて参加観察およびインタビューを行った.フィールドワークで得た情報はフィールドノートに記述し,特記すべき行動や事物については承諾を得て写真撮影を行った.また,研究のトピックである生活の術に沿った情報提供者の状況・言動をデータとして質的記述的研究を参考に分析した.結果:離島で生活機能低下をきたした独居の後期高齢者の生活の術として,『逆らえない南国の自然を受容』『自らを鼓舞しつつ選んだ生活』『自分に適した信仰・方法の選択』『シマ社会に根づく相互扶助の活用』『生活を補完する公的サービスの見極め』の5つの大カテゴリーが抽出された.考察:離島の厳しい自然環境下における独居の後期高齢者の生活は,風土への適応と精神的安寧,互助の精神などの生活の術により環境が整えられていた.離島地域における看護活動は,地域の文化的背景や特性を考慮したものであることが重要である.

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© 2013 一般社団法人 日本地域看護学会
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