2017 年 20 巻 2 号 p. 55-63
目的:訪問看護師による家族支援を必要とする事例の特徴と支援実態を明らかにし,家族支援の課題を検討した.
方法:A県全域68訪問看護ステーションの全看護師を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は,直近1か月に担当した療養者のうちで家族支援時間が最も長かった1事例を対象者が選出し,療養者と介護者の特性,訪問時間と回数,電話相談回数,家族支援時間と内容,訪問看護師からみた支援の効果とした.
結果:40ステーションの協力を得て223人に質問紙を配布し,178人から回答を得た(回収率79.8%).療養者は脳血管疾患が18.8%と最も多く,3世代同居家族が21.8%,在宅療養安定期の者が59.9%いた.介護者の64.9%に健康問題があり,介護意欲が高い者が82.6%いた.家族支援時間は訪問時間中の20.4%を占めた.支援の必要性を認識しているが約半数以上が実施できなかったのは経済的な問題,人間関係の調整,看取りの支援であった.支援に効果がなかったと認識していた者は15.2%で,その関連要因として電話相談回数,家族の介護意欲,支援内容が挙げられた.
考察:家族支援が必要な事例の健康状態や家族背景はさまざまであった.支援時間は長くて訪問時間の2割近くを占めることが予測された.必要であるが実施できない支援と効果が得られない支援がある可能性が示唆され,家族支援の研修と家族支援ができる制度が必要である.