日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
研究報告
子どもが一時保護となった母親の経験
─子育てを助ける対話への示唆─
門間 晶子
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2020 年 23 巻 3 号 p. 4-12

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抄録

目的:本研究の目的は,虐待の疑いで子どもが一時保護となった母親の,保護前後やその後の子育ておよび周囲の人々との関係のなかでの経験を明らかにし,子育て支援における親と支援者の対話や相互作用の示唆を得ることである.

方法:約1年半にわたるインタビューと参与観察を行った.倫理的な配慮として,研究協力への自由意思を尊重し,研究協力者の都合や体調へ配慮し,プライバシー保護に留意した.所属機関の研究倫理委員会の承認を得て行った.

結果:子どもを一時保護された母親は児相職員から〔気持ちや状況をしっかり聴いてもらえないまま引き離された〕と感じ,一時保護に憤る気持ちを代弁してくれた民生委員や頼りにしていた保育士の存在から,〔自分に説明する力がないときに自分の気持ちや親子の愛着を代弁してもらえた〕ことに安堵した.また,〔自分たち親子への支援者の印象や懸念が伝わりにくいが,伝えあう場をもてた〕という経験をした.〔子どもの目線に立つのはむずかしく,子どもをつい統制してしまう〕と振り返り,子育てのよりよい方法をいっしょに考えてほしいと願った.一時保護中の親教育を受けるなかで〔以前の子育てを振り返り,他者に頼りながら子どもへの理解を深める〕経験をした.

考察:支援への示唆として,親の気持ちや状況に焦点を当てて即応すること,当事者と支援者との間で開かれた対話をもつこと,が提案できる.

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© 2020 一般社団法人 日本地域看護学会
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