抄録
目的:「地区視診ガイドライン」を用いて行った学生の地区把握を構造的に分析し,「ガイドライン」の有用性と限界およびその活用方法を検討した.方法:1年間の保健師基礎教育課程学生101名を対象に,「ガイドライン」15項目の理解度および既存資料との関連について調査した.「ガイドライン」15項目すべてに回答の得られた96名について分析した.分析方法は「ガイドライン」15項目の因子分析を行い,理解しやすいものとそうでないものを抽出した.あわせて既存資料の分析と「ガイドライン」との関連性を検討した.結果:因子分析の結果,『政治・宗教・健康』『社会資源』『行き交う人々の様子』『町の様子』の4つの因子を抽出した(累積寄与率63.3%).理解度の高かったものは『町の様子』『行き交う人々の様子』『社会資源』,低いものは『政治・宗教・健康』であった.また,既存資料と結びつけて理解できたと答えた者ほど「ガイドライン」の平均得点が有意に高かった.考察:「ガイドライン」の活用によって,地区をチェックリスト的に観察することができ,既存資料とも結びつけて理解できていた.しかし既存資料にある基礎的データを確認するにとどまっており,住民の意識や行動と関連づけて把握することは困難であった.そのため,具体的に助言・指導するとともに,「ガイドライン」の活用目的と方法およびその限界を説明し,さらに住民と接する機会を増やして地区の理解を深めることが必要であると考えられた.