コミュニティ政策
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寄稿論文
地域コミュニティの教育力再生の動向と研究課題
新海 英行
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2005 年 3 巻 p. 35-51

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抄録

本稿は、子育て・教育をめぐる今日的問題状況や、問題解決をめざす政策や実践の経緯と現状をふまえ、地域コミュニティの教育力再生の可能性と課題について教育学、特に社会教育学の立場から検討する。第1に、非行・間題行動をはじめ、メディア世界への埋没、仲間・集団づくりの難しさ、学校生活の多忙化など、子供をめぐる問題状況を概観し、第2に、そうした問題に対応する地域コミュニティの教育力再生のための政策と実践の経緯と現状を紹介する。まず、各種審議会の答申等から政策の基本的特色を浮き彫りにする。それは、学歴社会の是正をめざし、「ゆとりと充実」の学校教育への転換を図り、学校・家庭および地域の連携のもと、学校週5日制と総合学習、さらに体験学習と社会奉仕活動によって「生きる力」「心」を育む教育を行おうというものであり、そこでは、ことのほか、地域コミュニティの持つ人間形成力ないし教育力への期待が寄せられていることを分析する。これに対し、上述の政策を契機に、あるいはボランタリーな発意で、余裕教室、コミュニティ施設、公民館などを拠点に取り組まれ、子供たちが共同の遊びや活動の中で育ちあえる自治的な集団づくりや居場所づくりのすぐれた実践を取り上げ、その積極的意義を考察する。以上の政策と実践をふまえ、第3に、「地域の教育力」概念をはじめ、地域コミュニティの教育的可能性の解明にとって検討すべき諸課題に論及する。

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