コミュニティ政策
Online ISSN : 2186-1692
Print ISSN : 1348-608X
ISSN-L : 1348-608X
3 巻
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
鼎談
寄稿論文
  • 新海 英行
    2005 年 3 巻 p. 35-51
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/07/31
    ジャーナル フリー
    本稿は、子育て・教育をめぐる今日的問題状況や、問題解決をめざす政策や実践の経緯と現状をふまえ、地域コミュニティの教育力再生の可能性と課題について教育学、特に社会教育学の立場から検討する。第1に、非行・間題行動をはじめ、メディア世界への埋没、仲間・集団づくりの難しさ、学校生活の多忙化など、子供をめぐる問題状況を概観し、第2に、そうした問題に対応する地域コミュニティの教育力再生のための政策と実践の経緯と現状を紹介する。まず、各種審議会の答申等から政策の基本的特色を浮き彫りにする。それは、学歴社会の是正をめざし、「ゆとりと充実」の学校教育への転換を図り、学校・家庭および地域の連携のもと、学校週5日制と総合学習、さらに体験学習と社会奉仕活動によって「生きる力」「心」を育む教育を行おうというものであり、そこでは、ことのほか、地域コミュニティの持つ人間形成力ないし教育力への期待が寄せられていることを分析する。これに対し、上述の政策を契機に、あるいはボランタリーな発意で、余裕教室、コミュニティ施設、公民館などを拠点に取り組まれ、子供たちが共同の遊びや活動の中で育ちあえる自治的な集団づくりや居場所づくりのすぐれた実践を取り上げ、その積極的意義を考察する。以上の政策と実践をふまえ、第3に、「地域の教育力」概念をはじめ、地域コミュニティの教育的可能性の解明にとって検討すべき諸課題に論及する。
  • ―コミュニティが文化所有をしているという視点―
    鳥越 皓之
    2005 年 3 巻 p. 52-65
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/07/31
    ジャーナル フリー
    現在のコミュニティ施策として、市民による参画と協働が期待され、実践されてもいる。ある住民がコミュニティ活動に熱心に参加したら、行政は評価し、また、そのような参加者の多いコミュニティを望ましいコミュニティと見なしている。そのこと自体は否定すべきではないが、私は人類学者ジーン・レイブと認知科学者エティエンヌ・ウェンガーが「学習」の研究から使い始めた「実践コミュニティ」 (Community of Practice) という考え方が従来のコミュニティ政策の考え方と異なっており、その違いが今後の政策に役に立つのではないかと思い始めた。その考え方は、市民がコミュニティに貢献するという従来の考え方ではなく、コミュニティが住民に価値あるものを与えるという考え方である。彼らはフィールド調査からそのようなことを得たと言う。本稿では、彼らの考え方に依拠しつつ、もう一歩進み、コミュニティが文化を所有しており、その文化を市民が享受しているという考え方を、神戸市の事例を用いて証明しようとした。レイブとウェンガーが使っているキーワードとして「正統的周辺参加」 (Legitimate Peripheral Participation) という概念があるが、神戸市の事例では、それを子どもたちに当てはめて考えてみた。
  • 藤原 武弘
    2005 年 3 巻 p. 66-84
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/07/31
    ジャーナル フリー
    第一章では、社会心理学的な立場からコミュニティ政策学へ接近してゆくという問題を考える際に有用となりそうな諸概念について説明した。それらは、予防、危機介入、コンピテンス、エンパワーメント、ソーシャル・サポート、コミュニティ感覚などである。第二章では、写真投影法を用いてコミュニティ感覚を測定した事例を紹介した。天草下島の住人に使い捨てのカメラを渡し、好きなところや好きなものを自由に撮影してもらった。その写真は、地域住民の生活構造が地域環境から影響を受けながら形成されることを物語っていた。そこから、写真投影法の新たな分析手法を開発した。
事例報告
自由投稿論文
  • ―福島県田村郡三春町の地区まちづくり協会の事例をとおして―
    牧田 実
    2005 年 3 巻 p. 160-184
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/07/31
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study is to investigate the relationship between “Neighborhood Autonomy” and community by examining the case of the Machizukuri Association in Miharu Town, Fukushima Prefecture. The organizational characteristics of the Machizukuri Association are as follows.
    First, the territory the Machizukuri Association covers is an ex-town or ex-village, which also comprises an elementary school ward, and this corresponds to the territory of a federation of community-based organizations. Second, it is positioned as an autonomous organization of residents by the public administration. Third, the association secures community representation and legitimacy by including leaders and officers of all social groups in the community.
    Additional functional characteristics of the Machizukuri Association are as follows. First, the association executes its function as a community-based management organization. Second, it carries out the function of deepening the amity among the residents, and third, it conducts the function of decision making, such as regulating the community interest and building consensus.
    In light of the results of this case study, with respect to the points of institution and function, the Machizukuri Association of Miharu Town can regarded as a prime example of the ideal of “Neighborhood Autonomy”
  • ―地域住民組織をめぐる日中制度比較―
    単 聯成
    2005 年 3 巻 p. 185-204
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/07/31
    ジャーナル フリー
    現在、中国はグローバリゼーションの影響下にある。本稿は、グローバリゼーションの状況下にある地域住民組織をめぐる政策を取り上げ、これを日本の制度設計過程と比較するという手法を用い、それらの政策が実施される社会的背景について考察することを目的とする。
    日本と中国の共通点の一つは、経済成長がもたらした都市社会構造の急激な変化への対策としてコミュニティ政策を打ち出したという点にあろう。また、都市住民組織の再編を目指して住民自治が強調されている点にも注目したい。それは、日本と中国を比較する際の接点となると考えられる。
    日本では、まず、1969年に国内の高度経済成長に対応するコミュニティ政策が策定され、その後の90年代半ば以降、経済のグローバリゼーションに対応して地方分権政策が打ち出された。市町村合併が推進されるなか、「地域自治組織」において「住民自治」をいかに実現するかが課題となっている。日本の場合、両者の間に30年の時間差があるが、中国では、改革開放政策により、国内の市場化と国外の市場化が同時並行的に進んでいるため、それらの変化への対応も同時に求められている。それは、コミュニティ政策および住民自治における日中両国の相違点だと考えられる。
    もう1つの相違点は、中国では、権限委譲を含めた法律の整備や政策の調整など、「制度の充実」が特徴であるのに対し、日本では、草の根の住民運動をはじめ、住民活動を積み重ねる「活動の充実」が特徴となっている点である。それは、中国では住民の自主的な活動の展開が、日本では地域住民組織活動の制度的担保を確立してゆくことが今後の課題となることを示唆するものである。
  • ―比較体制論からのアプローチ―
    鄭 南
    2005 年 3 巻 p. 205-228
    発行日: 2005年
    公開日: 2014/07/31
    ジャーナル フリー
    20年以上の国有企業改革と市場経済の進行に伴い、中国の社会保障体制は大きな変容に直面するようになった。急激な階層化、地域間の経済格差の拡大と地方分権化の進行は中国の社会保障に独自の様相をもたらしている。中国の社会保障体制の変容を理解するために、本論文は社会保障の体制比較に関する理論を参照して、計画経済時代の社会保障、市場経済化の展開に伴う現在の社会保障改革を位置付け、比較体制論の見地から理論的に検討する。さらに、中国社会保障システムの市場化過程中の変容の独自性を提えるために、本論文は「地域コーポラティズム」という概念を用いて地域間の社会保障における格差の発生要因を説明する。すなわち、計画経済時代に単位は平等主義という原則で社会保障において大きな役割を果たしてきたが、現在では地方分権化によって地域は再分配に関わるシステムに変化しつつある。地方政府というローカルな権威は大きな役割を果たし、そのイニシアチブの大きさは経済発展のみならず社会保障においても異なる結果をもたらしている。地域コーポラティズムの形成は一時的なものではなく、これからも社会保障に大きく影響するだろう。単位保障の後退によって、都市部においても家族(親族)保障の役割もますます大きくなるだろう。
feedback
Top