抄録
ソーシャル・キャピタルの形成には、市民活動が大きな影響を持つことが知られている。ただ日本の市民社会論では、現代的で自律型の市民活動に関心が集中し、伝統的な地縁団体や行政系ボランティアがつくる地縁ネットワークの役割や意義についての研究はまだ少ない。このため本論では、ソーシャル・キャピタル論とその背景にある市民社会論の関係を再考した上で、地域の安全や福祉に取り組む地縁ネットワークの意義を再確認し、これが顔の見える関係の基盤を造り、ソーシャル・キャピタルの要素である信頼の源泉として機能する可能性について考察する。