比較政治研究
Online ISSN : 2189-0552
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今なお「政治」が重要なのか?
―比較福祉国家研究の30年を振り返る
田中 拓道
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2025 年 11 巻 p. 39-57

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抄録

エスピン=アンデルセンによって福祉レジーム論が提唱されて以降、政治経済学や比較政治学による福祉国家研究が隆盛となった。本論文では過去30年間の主要な研究をレビューし、政治分析の変遷と今日の課題を指摘した。福祉国家に関する政治分析の対象は構造→制度→アクターへと変遷してきた。レジーム分類に関する研究とOECDの統計データを分析すると、先進諸国のレジームの違いは縮小し、EU諸国ではほぼ消失していることが明らかとなる。さらに時系列的な変化を考慮に入れると、左右党派性の福祉政策への影響は1990年代にほぼ消失する。党派対立が左右対立だけでなく、社会文化的な対立を含む多次元へと変化したと主張する研究もあるが、福祉政策についてその主張は十分検証されていない。福祉国家研究の今後の課題として、対象地域の先進諸国からの拡張、ポピュリズム政党の福祉政策への影響、社会的投資の包摂性を分岐させる政治的要因という三点が挙げられる。

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© 2025 日本比較政治学会
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