比較政治研究
Online ISSN : 2189-0552
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  • ―集合地点の聖地化とその後の革命―
    新子 泰平, 関 颯太, 倉石 東那
    2025 年 11 巻 p. 1-20
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/27
    ジャーナル フリー

    なぜ革命は発生するのか。革命の主体であるところの市民や反政府勢力に着目する先行研究では、フォーカルポイントの存在に要因を求め、それを特定する分析が蓄積されてきた。具体的には、選挙期間中や宗教イベント中などの革命が発生するタイミング、いわば「時間的なフォーカルポイント」を明らかにしてきた。その一方で、市民や反政府勢力が一斉に集合するためのロケーション、「空間的なフォーカルポイント」については、理論的な研究はほとんどされてこなかった。そこで本稿は、より具体的に、一度「革命」が試みられた場所は、それ以後の大衆動員において動員場所となる確率が高まるのか、またそれはなぜなのか、という問題意識のもと、「過去の革命で市民が集合した地点は、聖地化され、その後の革命においても市民が集合する地点となりやすい」という理論を提示する。そして、革命で集まったとされる地点を特定した新規データセットを構築し、それを用いたデータ分析と、フィリピンを事例に理論を検証する。

  • ―党首選出過程をめぐる非公式慣行と党地方組織の役割
    安田 英峻
    2025 年 11 巻 p. 21-37
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/18
    ジャーナル フリー

    本研究は、下院議員のみが投票権を持つ党首選出制度を採用していたイギリス保守党を事例に、投票権を持たない党地方組織がどのような役割を果たしていたのかを検討した。先行業績は、投票権の有無を基準にして、党首選出における党内民主主義の程度を開放性から閉鎖性のスペクトラム上で位置付けてきた。だが、成文化された権利規定だけでは、党内の民意伝達プロセスを十分に捉えることはできない。むしろ、投票権以外の党内民主主義の捉え方として、党内固有の慣行が重要な役割を果たす場面は少なくない。

    本稿では、党首選出過程におけるインフォーマルな党内慣行を明らかにするため、解釈主義アプローチの立場から検討した。分析の結果、保守党は、議会主権と党内民主主義を両立させるため、下院議員と党地方組織との間で事前協議を行った後、その判断を議員に委任していたことが明らかになった。本稿は、成文化された権利規定の枠外にある非公式慣行が、党地方組織からの民意伝達を補完していたことを指摘する。

  • ―比較福祉国家研究の30年を振り返る
    田中 拓道
    2025 年 11 巻 p. 39-57
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/03
    ジャーナル フリー

    エスピン=アンデルセンによって福祉レジーム論が提唱されて以降、政治経済学や比較政治学による福祉国家研究が隆盛となった。本論文では過去30年間の主要な研究をレビューし、政治分析の変遷と今日の課題を指摘した。福祉国家に関する政治分析の対象は構造→制度→アクターへと変遷してきた。レジーム分類に関する研究とOECDの統計データを分析すると、先進諸国のレジームの違いは縮小し、EU諸国ではほぼ消失していることが明らかとなる。さらに時系列的な変化を考慮に入れると、左右党派性の福祉政策への影響は1990年代にほぼ消失する。党派対立が左右対立だけでなく、社会文化的な対立を含む多次元へと変化したと主張する研究もあるが、福祉政策についてその主張は十分検証されていない。福祉国家研究の今後の課題として、対象地域の先進諸国からの拡張、ポピュリズム政党の福祉政策への影響、社会的投資の包摂性を分岐させる政治的要因という三点が挙げられる。

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