抄録
コンピテンシーとは,資質や能力と,日本ではとらえることができる。日本の対人援助専門職の養成段階において,コンピテンシーの獲得が,アウトカム基盤型教育にとって必要とされている。米国における心理専門職養成において,コンピテンシーモデルは重視されてきたが,日本の心理専門職,特に公認心理師養成においてもコンピテンシー概念が視点として重要かどうかを,先行研究をもとに,本論文において論じた。機能コンピテンシーについては,心の健康教育・啓発を追加することで,日本においてもほぼ当てはまることが示された。基盤コンピテンシーは,おおむね米国と日本の専門性を共通のものとして整理でき,他の要素も含めて,反省的実践として深めることが強調される。このようなコンピテンシーをふまえた心理専門職養成の考え方は,日本において,これまであまり意識されてこなかった。しかし,実際の養成の営みの中で重視してきた事柄と共通する面も多いと考えられる。日本における心理専門職養成において,コンピテンシー概念は,養成の質を上げるために重要な視点となるだろう。