公認心理師:実践と研究
Online ISSN : 2436-7524
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選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著論文
  • 古田 克利
    原稿種別: 原著論文(調査・実験研究)
    2024 年 3 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大学キャリアセンターの相談場面における学生を傷つける発言の有無とその内容を明らかにすることであった(研究1)。また,そのような発言が相談担当者と学生の支援関係に与える影響と,それが生起しやすい条件を,相談担当者の性別,および学生と相談担当者の性の一致・不一致に着目し明らかにすることであった(研究2)。研究1では,4,284名を対象にアンケート調査を実施し,傷つける発言を受けた経験のある592名を分析対象とした。研究2では,6,477名を対象にアンケート調査を実施し,895名のデータを分析対象とした。研究1の分析の結果,59%の学生が傷つける発言を受けた経験を有していた。また,その内容は「間接的マイクロアグレッション」「直接的マイクロアグレッション」「カウンセリング態度の欠如による発言」の3カテゴリーに分類された。研究2の分析の結果,学生(男性)では同性の相談担当者との間で間接的マイクロアグレッションが生じやすく,学生(女性)では同性の相談担当者との間で直接的マイクロアグレッションが生じやすいことが明らかになった。
  • 堀 匡, 田中 秀紀, 願興寺 礼子, 森田 美弥子
    原稿種別: 原著論文(調査・実験研究)
    2024 年 3 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,学部公認心理師科目「心理実習」を受講した学生の学びの内容と成長のプロセスについて検討することを目的とした。A大学の心理実習の受講生8名(男性1名,女性7名)を対象に半構造化面接によるインタビュー調査を行った。インタビューの逐語記録を,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)に基づき分析した結果,42の概念が得られ,それらは,9つの小カテゴリーと3つの大カテゴリーにまとめられた。また,カテゴリー間の関係性を検討しモデル化した。その結果,心理実習を通して,対人支援の基本的態度のような【関与に基づく体験的学び】と臨床現場における心理職としての役割や視点などに関する【既存の知識が具体化される学び】が得られた。また,【関与に基づく体験的学び】の一部が参照されて,【既存の知識が具体化される学び】が進むことが示された。そして,それらの学びが,自身の課題やキャリア意識などに対する【自己理解の深まりと意識の変容】を促すことが示唆された。
  • 堀口 康太
    原稿種別: 原著論文(調査・実験研究)
    2024 年 3 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,児童家庭支援センター(以下,センター)の運営方針,地域における支援のあり方,他機関連携,対応方法に関する職員の意識や心がけを通して,センターの専門性や役割を明確にすることを試みる。全国の32のセンターの職員に対して,対面とオンラインを併用して60分程度の聞き取り調査を実施した。上記で掲げた4つの点に関する語りを抽出し,類似性に基づき,語りをカテゴリ,大カテゴリに分類し,大カテゴリ間の関連性を検討した。分析の結果,《センターが専門的な相談支援を担う役割をもつという意識》という運営方針があることで,それを《地域における支援の“足らず”を補う》という,地域における支援のあり方へと具体化することができ,地域における支援のあり方を実現するための手段として,《他機関との綿密な連携構築の心がけ》《専門性を活かした相談員と心理士の柔軟な相談対応》《保護者や子どもの立場を尊重した相談対応》を試みているという流れがあることが示された。センター職員の意識や心がけに着目することによって,各センターが地域において担うべき専門的な役割を明確にするための1つの材料を提供できると考えられる。
  • 元永 拓郎
    原稿種別: 原著論文(展望研究)
    2024 年 3 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    コンピテンシーとは,資質や能力と,日本ではとらえることができる。日本の対人援助専門職の養成段階において,コンピテンシーの獲得が,アウトカム基盤型教育にとって必要とされている。米国における心理専門職養成において,コンピテンシーモデルは重視されてきたが,日本の心理専門職,特に公認心理師養成においてもコンピテンシー概念が視点として重要かどうかを,先行研究をもとに,本論文において論じた。機能コンピテンシーについては,心の健康教育・啓発を追加することで,日本においてもほぼ当てはまることが示された。基盤コンピテンシーは,おおむね米国と日本の専門性を共通のものとして整理でき,他の要素も含めて,反省的実践として深めることが強調される。このようなコンピテンシーをふまえた心理専門職養成の考え方は,日本において,これまであまり意識されてこなかった。しかし,実際の養成の営みの中で重視してきた事柄と共通する面も多いと考えられる。日本における心理専門職養成において,コンピテンシー概念は,養成の質を上げるために重要な視点となるだろう。
資料論文
  • 自由記述の質的分析
    坂本 憲治
    原稿種別: 資料論文(調査・実験研究)
    2024 年 3 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    内閣府の国際比較調査によると,日本人青年は諸外国に比べて将来に明るい希望が持てない割合が高いことが指摘されている。本研究では大学生140名を対象にWeb 調査を行い,将来の明るい希望の有無に関する理由を質的に分析した。その結果,6つのカテゴリが生成された。将来に明るい希望を持てる大学生と持てない大学生は,「目標の明確度」「目標達成の期待」「なんとかなりそう」という3つの特性の次元(高—低)により異なる体験をしていることが示された。「なんとかなりそう」という快調な気分・感情を伴う特性は,将来の目標に関わる2特性よりも,大学生の希望に影響力を有していると考えられた。また,社会と個人の相互作用という観点から,直接的には言語化されない何かが存在している可能性も示唆された。今後は,本研究から得られたカテゴリをもとに面接調査を進め,青年の希望理論を精緻化することが課題である。
  • 加藤 佑佳, 岡部 佳世子, 武藤 崇, 下津 咲絵, 岩原 昭彦, 成本 迅
    原稿種別: 資料論文(実践研究)
    2024 年 3 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2024/07/01
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2024/03/01
    ジャーナル フリー
    With/Afterコロナ時代に有用な実習の内容を検討するための基礎資料として,公認心理師養成課程における学部生を対象に,2021年度にX病院で行ったオンラインによる心理実習に関する実践を報告するとともに,アンケート調査から実習に参加した学生の理解度や満足度,実習に求める内容などについて明らかにすることを目的とした。オンライン実習では,①公認心理師の役割と業務紹介,②面接技法セミナーの講義,③予診のロールプレイの3つのセミナーを行い,受講した2大学の学部4回生計43名のうち37名から回答を得た(回収率86%)。各カリキュラムの理解度として「80–100%理解できた」と「60–79%理解できた」を合わせると,①36名,②32名,③35名であり,満足度として「満足している」と「やや満足している」を合わせると,①37名,②35名,③35名と,オンライン実習でもおおむね高い理解度と満足度が示された。また,模擬カンファレンスへの参加やロールプレイの実施などを望む意見がみられた。今後,対面とオンラインのメリット・デメリットを加味しながら,学生,実習現場双方にとって有意義な実習を検討していきたい。
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