抄録
本研究は,文化財活用施策の顕著な例とされる「日本遺産」を対象に,事業実施主体別の取組および認識される効果および相互の関係を明らかにし,文化財保護の継続性に効果的な取組および課題を考察することを目的とした.
2020年までに認定された日本遺産を対象に,組織や取組,効果に関してアンケート調査を行った.その結果,単独基礎自治体(地域型)は文化財保護および商工観光部局を中心に各種団体によって構成されていたが,他は同様の体制ではなく,事業実施主体ごとに体制は異なっていた.文化庁による補助対象の取組のうち,事業の基盤といえる人材育成や調査研究の典型的な取組は少なかった.これらの取組に基づいて分類すると,人材育成および多様な調査に取組み,長期戦略を策定している地域型および複数の基礎自治体連携(市町村シリアル型)では,文化財の継続的な保護につながる効果が認識されており,自治体内部の体制構築の重要性が示唆された.