抄録
本稿は,文化財保護法の改正に伴い新設された無形文化財及び無形民俗文化財の登録制度の問題点を,無形の文化財の登録制度の議論の過程や,無形文化遺産条約との比較を通じて分析した.
無形文化財の登録制度については,生活文化の統括的団体に対して登録無形文化財として認定する問題について論じた.流派の公平性の問題に対しては,制度設計段階で,あらかじめ統括的団体に対して登録するという方法を採用していた.一方で,登録無形文化財から「格上げ」され,重要無形文化財に指定されても,重要無形文化財保持者の認定は困難であることが想定された.
無形民俗文化財は,これまで価値の序列化について論じてこなかったが,登録制度によって価値の論理が導入された.無形民俗文化財の登録や国指定への「格上げ」をめぐって,果てなきブランド争いへの道が拓かれてしまったことが明らかになった.