抄録
気胸を契機に発見された悪性胸膜中皮腫の2例を経験した. 症例1. 80歳男性. 左気胸で胸腔鏡下に気腫性嚢胞を切除した. 術後再発で再手術を行ったが, その後も肺瘻を繰り返した. 術中の胸膜面に変化は認めなかったが再切除肺の病理所見で臓側胸膜表面及び間質内に乳頭状に増殖する腫瘍を認めた. 対症療法で経過観察したが約2年後腫瘍死した. 症例2. 45歳男性. 7cm大の気腫性嚢胞を伴う右気胸に対し胸腔鏡下手術中, 嚢胞壁に白色の小結節を数個認めた. 病理所見で悪性胸膜中皮腫上皮型との診断を得た. 術後も気胸を繰り返した. CT上腫瘤性病変は指摘できず胸水貯留もないため, 審査胸腔鏡を行い胸膜生検で再度診断確定を行い, 後日右胸膜肺全摘術を施行した. IMIG分類のT1b, N0, M0, stage1bであった. 術後30ヵ月再発兆候を認めない. 腫瘤性病変や胸水貯留が認められなくても, 中年以降の繰り返す気胸の場合, 悪性胸膜中皮腫も鑑別に入れるべきである.