日本呼吸器外科学会雑誌
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巻頭言
原著
  • 山本 高義, 岩田 剛和, 清水 大貴, 芳野 充, 松井 由紀子, 飯笹 俊彦
    2022 年 36 巻 4 号 p. 376-381
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    背景:胸骨悪性腫瘍に対して胸骨切除を行う際,腫瘍からの距離をとるため鎖骨や肋骨を合併切除することがあり,欠損範囲に応じて人工材料や筋皮弁による再建が選択される.

    目的と方法:2009年1月から2019年12月に当院で行われた胸骨悪性腫瘍切除例を調査し,再建法の選択・適応について検討した.

    結果:症例は7例で,転移性骨腫瘍5例,軟骨肉腫1例,未分化多形肉腫1例であった.全例で胸骨柄切除ないし胸骨体部分切除に加え複数の肋骨を切除しており,鎖骨近位側も切除した症例が4例あった.欠損部分の再建は5例で施行しており,人工材料による再建例は1例のみで,皮膚欠損を生じる,もしくは,胸骨体部を切除した場合には再建を行っていた.

    結論:胸骨切除の際に必ずしも硬性再建の必要はなく,軟部組織による再建のみでも良好な経過が得られていた.

症例
  • 岡 直幸, 政井 恭兵, 加勢田 馨, 朝倉 啓介, 菱田 智之, 淺村 尚生
    2022 年 36 巻 4 号 p. 382-388
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は51歳,女性.潰瘍性大腸炎に対して19年前より薬物療法が開始され,寛解が維持されていた.胸部CT検査で左肺下葉に内部に低吸収域を伴う腫瘤影を認めた.増大傾向を認め,原発性肺癌が疑われたため左肺下葉切除術を施行した.病理組織所見では悪性所見は認めず,高度な炎症性細胞浸潤,膿瘍形成,杯細胞減少など潰瘍性大腸炎活動期の腸管病変に類似した所見であったため,臨床経過と併せて潰瘍性大腸炎合併肺肉芽腫と診断した.潰瘍性大腸炎を含めた炎症性腸疾患はさまざまな臓器に腸管外合併症を認めることがあり,炎症性腸疾患に合併する肉芽腫は肺癌との画像診断は困難である.病理組織学的にも多彩な所見を示すため,少量の検体量では確定診断は困難な場合が多く,手術検体を用いた病理組織学的診断が必要となることがある.

  • 沖 智成, 望月 孝裕
    2022 年 36 巻 4 号 p. 389-395
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    降下性壊死性縦隔炎は口腔・咽頭感染が縦隔へ下降して発症する急性縦隔炎である.症例は61歳の男性で,左扁桃周囲膿瘍,喉頭浮腫に対し耳鼻咽喉科で緊急左咽頭切開ドレナージ,気管切開が施行された.その後も炎症は改善せず,入院後4日目に降下性壊死性縦隔炎を発症して当科で緊急胸腔鏡下右縦隔ドレナージを施行した.しかし,縦隔ドレーンの変位と肺の癒着によるドレナージ不良を起こし,術後6日目に再度縦隔ドレナージを施行した.術後は縦隔胸腔洗浄を行い,55日目に独歩退院となった.降下性壊死性縦隔炎は稀な疾患であるが致死率が高く,救命には適切なドレナージを必要とする.奇静脈弓を利用した縦隔ドレーンの固定により,有効な縦隔ドレナージが可能となったため報告する.

  • 山口 大輔, 伊藤 温志, 金田 真吏, 川口 晃司, 島本 亮, 高尾 仁二
    2022 年 36 巻 4 号 p. 396-401
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は64歳女性.子宮体癌で子宮全摘術+骨盤腔内リンパ節郭清を施行された.術後5日目に呼吸苦があり,胸部エックス線で右胸水貯留を認めた.胸腔穿刺では,白濁なし,リンパ球47.8%,Triglyceride 13 mg/dL,細胞診で悪性所見は認めなかった.術後10日目に胸腔ドレーンを挿入するも800 ml/dayの排液が持続した.術後の骨盤腔内からのリンパ漏で横隔膜交通症を介した右胸水を疑い,診断のため鼠径部へのインドシアニングリーン皮下注射とリンパ管シンチグラフィーを行った.術後28日目にリピオドールでリンパ管造影を施行後,排液が減り,胸腔ドレーンを抜去できた.患者は術後43日目に退院し,その後胸水貯留なく経過している.本症例は骨盤腔内リンパ節郭清によるリンパ漏が横隔膜交通症を介し右胸水貯留に至った症例と考えたが,乳び槽とリンパ管の合流部より下位のレベルでのリンパ管損傷であったため胸水は乳びを呈さなかったと推測した.

  • 内堀 篤樹, 西村 元宏
    2022 年 36 巻 4 号 p. 402-407
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は77歳女性.左上葉肺癌の疑い(cT1miN0M0 stage1A1)に対して胸腔鏡下左肺舌区切除を施行した.手術時間は130分で出血は少量であった.手術1時間後に徐脈と血圧低下を認め洞不全症候群とこれに伴う血圧低下と判断した.カテコラミンおよび輸液負荷で全身状態は安定したもののその後数日間に渡り緩徐に進行する貧血を認めた.胸腔内出血は否定的であり経過観察としたが第7病日の血液検査で炎症反応の上昇を認め,精査目的に撮影した腹部造影CT検査で多量の血性腹水および脾臓の楔状造影欠損域を指摘され脾臓損傷によると考えられる腹腔内出血と診断した.この時点では明らかな活動性出血は認めなかったため保存的治療の方針とし,貧血進行がないことを確認して第25病日に退院となった.術後に血圧低下や貧血進行を認めた場合は心原性ショックや胸腔内出血による出血性ショック以外にも腹腔内出血を疑い精査を行う必要がある.

  • 水谷 尚雄, 田尾 裕之
    2022 年 36 巻 4 号 p. 408-413
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は55歳の男性.47歳の時に十二指腸乳頭部癌(以下,乳頭部癌)に対して根治手術を施行された(病理病期はIII期).術後8年目のCTで右肺S4に胸膜陥入とspiculaを伴う辺縁不整な1.1 cm大の充実性結節を認めた.FDG-PET/CTで同結節のSUV maxは2.31で,他臓器への転移は認めず原発性肺癌としてロボット支援胸腔鏡手術を施行した.中葉切除を開始したが,中葉気管支リンパ節及び中下葉間リンパ節が肺動脈と気管支に癒着していた.同リンパ節の迅速病理診断で腺癌の転移を認めた.中下葉切除へ移行し,縦隔リンパ節郭清を施行して完遂した.術後の病理検査では乳頭部癌の肺転移と診断された.切除断端は陰性で,術後はTS-1を投与し術後10ヵ月目のCTで再発を認めていない.乳頭部癌の原発巣の術後5年以上の長期遠隔期の再発は稀ではないが,肺転移切除の報告は無く,文献的考察を加えて報告する.

  • 川岸 耕太朗, 竹内 幸康, 河中 聡之, 小来田 佑哉, 香川 優子, 奥村 明之進
    2022 年 36 巻 4 号 p. 414-417
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    55歳女性.既往歴は脳梗塞,子宮筋腫,高血圧,II型糖尿病.脳梗塞の精査のCTで両肺にびまん性多発結節を認め,肉芽腫性病変を疑われ当院内科を紹介受診された.結核・非結核性抗酸菌症は否定され外科的生検目的に当科紹介となった.胸腔鏡下右上葉部分切除を施行した.病理組織像で短紡錘形の細胞増殖が認め,Estorogen・Progesteron receptorが陽性であり,良性転移性平滑筋腫の診断となった.閉経直前であることからホルモン療法は導入せず,経過観察とした.術後8ヵ月で胸部画像所見の進行は認めていない.BMLは子宮筋腫の既往のある女性に発症する稀な疾患である.子宮筋腫核出術などを誘因とする血行性播種が多いとされているが,本症例では子宮手術の既往はなく明らかな原因は不明である.両側びまん性粒状影を認めた場合,子宮筋腫の既往がある女性ではBMLの可能性も考慮する必要があると考えられた.

  • 矢野 海斗, 菱田 智之, 前田 智早, 江本 桂, 朝倉 啓介, 淺村 尚生
    2022 年 36 巻 4 号 p. 418-424
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は80歳代男性.左肺癌術後8年目のフォローアップ胸部CTにて右第7肋骨に接する22 mm大の胸膜結節を認め,診断・治療目的に腫瘍摘出術を施行した.病変は,右肺下葉と癒着しており肺部分合併切除を要したが,肋骨および肋間筋からは容易に剥離が可能であり,胸壁は温存して手術終了とした.病理所見は,形態学的,免疫組織学的に上皮型悪性胸膜中皮腫を支持する結果であったが,肉眼的,組織学的に胸膜に沿ったびまん性進展は認められず,限局性悪性胸膜中皮腫と診断した.病理学的には胸壁側剥離面近傍に腫瘍細胞が存在しており,マージン確保のための胸壁切除の必要性が議論となるが,経過観察にて術後2年無再発生存中である.

  • 千馬 謙亮, 棚橋 雅幸, 鈴木 恵理子, 吉井 直子, 渡邊 拓弥
    2022 年 36 巻 4 号 p. 425-429
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    アミロイドーシスは臓器にアミロイドと呼ばれる線維性蛋白が沈着するもので,呼吸器系のみに病変を認めるものは限局性肺アミロイドーシスと呼ばれる.症例は56歳のブラジル人男性.検診胸部単純X線写真で右肺門部異常影を指摘され,精査のCTで右肺門部に3 cm大の腫瘤を認め,内部に石灰化を疑う高吸収域を伴っていた.超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)では確定診断に至らなかった.腫瘍の診断・治療を目的に胸腔鏡補助下腫瘍切除術を施行した.病理診断はAA型アミロイドーシスで,内部の高吸収域は骨化巣であった.比較的稀な骨化巣を伴う限局性結節性肺アミロイドーシスを経験したので報告する.

  • 原田 愛倫子, 尾高 真, 塚本 遥, 矢部 三男, 秋葉 直志, 大塚 崇
    2022 年 36 巻 4 号 p. 430-434
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は46歳男性.2日前からの発熱および血痰を主訴に当院救急外来を受診した.胸部CTで右肺中葉に肺膿瘍および肺炎像を認め緊急入院した.第2病日に喀血を認め,胸部造影CTで径10 mmに拡張した血管影を認め,肺膿瘍に伴う感染性仮性肺動脈瘤と診断した.仮性肺動脈瘤に対してtranscatheter arterial embolization(TAE)を施行したが,不成功であった.喀血が持続するため,気管挿管下で気管支鏡検査を施行した.止血のため中葉気管支にEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)を充填し止血を図った.第5病日に右肺中葉切除術を施行し肺膿瘍および仮性肺動脈瘤を切除した.術後,肺血栓塞栓症を発症したが第37病日に自宅退院した.今回,我々は肺膿瘍に合併した感染性仮性肺動脈瘤に対してTAE,EWSおよび肺葉切除術を施行し救命し得た1例を経験した.

  • 安藤 紘史郎, 岩澤 卓, 堂野 恵三
    2022 年 36 巻 4 号 p. 435-440
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は60歳代,男性.突然発症の呼吸困難を主訴に当院を受診し,胸部X線にて右高度,左中等度の両側同時気胸と診断された.右胸腔のドレナージのみで両側肺の拡張を認め,9年前の胸腺カルチノイドに対する胸腔鏡下拡大胸腺摘出術の既往から胸腔間交通が疑われた.第8病日に胸腔鏡下両肺囊胞切除術および胸膜被覆術を施行し,同時に前縦隔に径4 cm大の両側胸腔間交通部を認めたため,ポリグリコール酸(PGA)シートおよびフィブリン糊による閉鎖を施行した.

    胸腔間交通は稀な病態であるが,縦隔手術歴のある両側同時気胸の場合,その可能性を念頭に置き,呼吸状態が切迫していなければ片側の胸腔ドレナージで両側同時気胸の改善が見られるかの確認が有用と考えられる.また気胸再発予防目的に手術を検討すべきであり,囊胞切除や胸膜被覆術などに加え,胸腔間交通の閉鎖について考慮すべきと考えられるが,その方法や効果については今後の検討課題である.

  • 髙橋 秀悟, 今井 一博, 高嶋 祉之具, 中 麻衣子, 栗山 章司, 南谷 佳弘
    2022 年 36 巻 4 号 p. 441-447
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    気管腫瘍に対する外科的治療は,症例に合わせた術式および術中管理の工夫が必要である.今回我々は,原発性気管腫瘍に対してVV-ECMO併用下での1切除例を経験した.症例は55歳女性.慢性咳嗽を主訴に前医を受診し,精査で声帯より2 cm末梢の気管膜様部に有茎性の腫瘍を認め,手術目的に当院へ紹介となった.VV-ECMO併用下(脱血:右大腿静脈,送血:右鎖骨下静脈),頸部襟状切開での気管環状切除(第1-2気管軟骨輪),気管端々吻合を行った.病理組織診断は,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor,IMT)の診断であった.気道閉塞リスクが高い気管腫瘍手術において,覚醒下でのECMO導入は有用と考えられる.また,出血量増加などの術中合併症リスクを回避しつつ,術野確保などの安全性を向上できる可能性がある.

  • 永山 加奈, 前田 英之, 小林 零, 川野 亮二
    2022 年 36 巻 4 号 p. 448-454
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性.2週間前から労作時の呼吸苦が出現し,増悪したため,当院へ救急搬送された.II度の左気胸を認め,胸腔ドレナージを施行し入院とした.気瘻が持続したため手術適応と判断し,胸腔鏡下肺囊胞切除術を施行し,術後4日目に退院した.切除した肺は病理組織学的に血管肉腫と診断され,全身精査したところ,頭皮に易出血性腫瘤を認めた.以上から,頭皮原発血管肉腫の多発肺転移という診断で,ドセタキセル単剤による化学療法を開始した.その後も異時性に両側気胸を複数回繰り返したが,いずれも胸膜癒着療法にて軽快した.化学療法は一定の効果をもたらしたが,3コース終了後に喀血し,その吸引性肺炎により死亡した.血管肉腫は皮膚科領域疾患であるが,高率に肺転移を合併し,続発性気胸を繰り返すことが多く,呼吸器外科医も疾患の特徴をよく理解しておく必要があるため報告する.

  • 笹本 晶子, 松本 卓子, 片桐 さやか, 清水 俊榮, 前 昌宏
    2022 年 36 巻 4 号 p. 455-458
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    症例は58歳男性.飲酒後転倒し前医を受診した.右第9~11肋骨骨折を認め,受傷4日目に右外傷性気胸を発症した.胸腔ドレナージにて改善するも,退院後に右気胸が再発し手術目的に当院に紹介となった.右第10肋骨骨折部の骨片突出による肺損傷と診断し,翌日3ポートにて胸腔鏡下に,生検鉗子を用いて肋骨骨片を摘出し右肺下葉部分切除を追加した.術後3日目に経過良好のため退院となった.外傷性気胸で最も多い原因は骨折した肋骨による肺損傷とされ,胸腔ドレナージのみで空気漏れが持続する場合は手術が検討される.今回胸腔内から肋骨骨片を摘出した症例を経験したため報告した.

  • 山﨑 順久, 洪 雄貴, 坂口 泰人, 田中 宏和, 園部 誠
    2022 年 36 巻 4 号 p. 459-464
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    62歳,男性.呼吸困難感のため救急外来を受診され,ヘモグロビンが4.1 g/dLの高度貧血で,骨髄検査では赤芽球のみが低形成,胸部CTでは右肺上葉の結節影と前縦隔の腫瘤影を認めた.胸腺腫を合併した赤芽球癆と診断し,胸腔鏡下胸腺腫摘除術,右肺部分切除術を施行した.病理組織検査では正岡分類I期,type AB胸腺腫および肺過誤腫であった.術後8日よりシクロスポリンを導入した.寛解を得てシクロスポリンを緩徐に減量し,術後1年4ヵ月に投与を終了した.術後5年を経過し,赤芽球癆は寛解を維持しており,胸腺腫の再発も認めない.胸腺腫を合併した赤芽球癆に対する胸腺腫摘除の効果は乏しいとされる一方,シクロスポリンは奏功率が高く,導入療法および維持療法に使用される.シクロスポリンの維持療法終了後も寛解を維持した稀な症例であり,胸腺腫摘除が寛解に寄与した可能性が示唆されたため,文献的考察を加え報告する.

  • 竹井 大貴, 下山 孝一郎, 山口 彩, 三浦 史郎, 阿比留 正剛, 田川 努
    2022 年 36 巻 4 号 p. 465-471
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    横隔膜浸潤した肝細胞癌右下前縦隔リンパ節転移の胸腔鏡下切除例を経験したので報告する.症例は64歳男性,2年前に肝細胞癌に対してTranscatheter arterial embolizationとS8の肝部分切除を施行した.経過観察中のCTで右心横隔膜角部に結節影を認め,増大傾向がみられたため肝細胞癌の転移を疑った.8 mmHgの炭酸ガス送気下に胸腔鏡下腫瘍切除術を施行した.腫瘍は右肺中葉と横隔膜に癒着し,浸潤が疑われたため,右肺中葉および横隔膜を一部合併切除した.病理診断は肝細胞癌のリンパ節転移で,横隔膜浸潤も認めた.肝細胞癌の孤立性縦隔リンパ節転移は非常に稀であるが,解剖学的に肝臓から横隔膜を通り縦隔を経るリンパ流路もある.病変が限局していれば肉眼的完全切除をすることで予後の改善につながる可能性があり,外科的切除は有効な治療選択肢と考える.

  • 多々川 貴一, 新居 和人, 河野 洋二, 中川 靖士, 熊谷 久治郎, 榊 美佳
    2022 年 36 巻 4 号 p. 472-477
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    2015年の肺腫瘍のWHO分類で硬化性血管腫は硬化性肺胞上皮腫へと名称の変更が行われた.硬化性肺胞上皮腫は原発性肺腫瘍の1-5%程度を占める比較的稀な腫瘍である.中年女性に好発し,リンパ節転移は1%,多発例が4%程度と報告されている.リンパ節転移を伴う多発硬化性肺胞上皮腫に対して外科的切除を行ったため報告する.

    症例は25歳女性.検診で胸部異常影を指摘された.胸部CTでは左下葉S10に区域性に分布する多発結節影を認めた.経気管支肺生検で硬化性肺胞上皮腫の診断を得た後,外科的切除の方針とした.手術は胸腔鏡下左S10区域切除を施行した.手術時間5時間26分,出血量20 ml.合併症なく経過し術後2日目に退院となった.病理診断でも硬化性肺胞上皮腫の診断となり,またLN#13に転移が認められた.

    硬化性肺胞上皮腫はその病理学的多様性から術前の診断や,術中迅速病理診断での診断も難しいとされている.本症例では術前に確定診断を得られており外科的切除の方針となった.病変が3 cmを超えるような大きさの場合にはリンパ節転移を来しやすいとの報告があるが,本症例では最大でも12 mm程度であり,またリンパ節転移を疑う様な腫大は画像上認められなかった.そのため郭清を省略したが,病変径が小さい場合でも多発であればリンパ節郭清を考慮するべきなのかもしれない.

    本症例は多発であり,さらにリンパ節転移を認めるという点で非常に稀な症例である.同様の報告は検索した限りでは認めえなかった.本疾患は稀ではあるが再発を起こした症例も報告されている.再発による死亡例は報告されていないが,今後も慎重な経過観察が必要と考えられる.

  • 三和 健, 大野 貴志, 中村 嘉伸, 角 尚紀, 宮本 竜弥, 春木 朋広
    2022 年 36 巻 4 号 p. 478-483
    発行日: 2022/05/15
    公開日: 2022/05/15
    ジャーナル フリー

    肺動脈肉腫は稀で予後不良とされる.症例は60歳,男性.主訴は労作時の息切れ.精査時胸部造影CT及びMRIで左肺動脈を閉塞する腫瘍を認め,肺動脈血管肉腫が疑われた.心臓外科と合同手術の方針となった.体外循環確立後,肺動脈幹を切開した.左主肺動脈を閉塞する腫瘍を認め,肉眼的マージンを確保して左主肺動脈を切除した.肺動脈壁断端の迅速病理診断は3回目で漸く陰性となり,肺動脈幹をウシ心膜で再建した.心囊内で左下肺静脈,続いて左上肺静脈を切離後に体外循環を離脱,その後左肺全摘を施行した.最終病理診断は左肺動脈血管肉腫で肺実質への直接浸潤と肺門リンパ節への転移を認めた.肺動脈の断端は陰性であった.術後補助化学療法は施行せず厳重に経過観察中で,術後10ヵ月現在再発兆候を認めていない.

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