抄録
胸膜中皮腫を疑い胸腔鏡を施行した症例の臨床所見,胸水マーカー・細胞診,胸部CT所見,胸腔鏡所見を検討した.対象は2003年から2006年4月までに胸膜中皮腫を疑い,胸腔鏡下胸膜生検を施行した32例で,最低1年間の経過観察をした症例である.診断は胸膜中皮腫19例,良性石綿胸水11例,結核性胸膜炎1例,咽頭癌胸膜播種1例であった.胸水ヒアルロン酸,CYFRA21-1がカットオフ値を超えるものは,強く胸膜中皮腫が疑われた.胸部CTは胸膜中皮腫の検出に優れているが,胸膜中皮腫の19例中3例に胸膜の肥厚のみで不整を認めないものがあり,胸水マーカーを組み合わせることにより診断率を上げることができた.胸腔鏡所見では,隆起型は生検部位の特定や診断が容易であったが,肥厚型は生検部位の特定が困難であり,十分な観察と全層性の組織の生検が必要であると考えられた.