日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
肺癌との鑑別が困難であった肺ヒストプラズマ症の1手術例
西川 敏雄村松 友義松三 彰井上 文之
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2008 年 22 巻 1 号 p. 92-96

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抄録

稀な真菌症である肺ヒストプラズマ症と診断された1例を経験したので報告する.症例は47歳,男性.検診にて胸部異常影を指摘され当院初診となった.右S9に10mm大の腫瘤を認めた.気管支鏡検査にてclass IIであり,また経過観察にて腫瘤の大きさ,性状とも変化を認めなかったが,肺癌の可能性も否定できなかったため手術を施行した.部分切除を行い,術中迅速病理検査にて悪性所見なしとのことであった.術後病理検査では当初クリプトコッカス症が疑われたが,抗体による免疫染色の結果では否定的であり,形態および遺伝子解析の結果よりヒストプラズマ症との診断であった.ヒストプラズマ症は国内での感染例は稀で報告例のほとんどは輸入感染症としてのものである.本症例は海外渡航歴はなく,国内での感染例である可能性もあるが,今後輸入感染症として増加することも考えられ,本疾患も念頭においた鑑別および治療が重要であると考えられた.

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