抄録
症例は肺結核に対し57年前に左胸郭形成術を施行された77歳男性.術後早期より出現するも放置していた胸壁腫瘤の増大を自覚し近医受診,精査加療目的に当科紹介となった.左肩甲骨下縁から腸骨上縁にかけ弾性硬な胸壁腫瘤を認め,CTでは大部分が嚢胞性の病変であった.穿刺培養は陰性であった.術前確定診断には至らず診断的治療目的にて摘出術を施行した.腫瘤は内部に繊維性異物が存在し,病理組織学所見と合せ,ガーゼ由来の異物性肉芽腫と診断した.X線感光性のないガーゼを用いた時代に手術既往のある症例で腫瘤病変を認めた場合には,胸部領域においてもガーゼ由来の異物性肉芽腫を念頭に置く必要がある.