日本呼吸器外科学会雑誌
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原著
肺切除周術期のナトリウム利尿ペプチドについての検討
中野 隆仁金田 浩由紀谷口 洋平齊藤 朋人小延 俊文齊藤 幸人
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2013 年 27 巻 5 号 p. 569-574

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抄録

肺切除後は肺血管床の減少に伴い右心負荷が上昇する.肺切除後の右心負荷に関連してナトリウム利尿ペプチドが上昇することがこれまでに報告されている.今回,胸部外科手術の周術期にヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(HANP)と脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)を測定し得た63例を対象に,その上昇率(術後7日目/術前)と肺切除量の関係を後ろ向きに検討した.HANP上昇率は肺葉切除例(n=25)で2.1倍,肺葉未満切除例(n=28)で1.5倍,肺切除を行っていない胸部外科手術例(n=10)で1.2倍を示し(P値0.019),NTpro-BNP上昇率はそれぞれ3.9倍,2.8倍,1.6倍を示した(P値0.051).今回の結果から肺切除量に応じて心負荷に違いがあることが示唆された.高齢患者や心疾患を合併する肺癌患者に周術期の心負荷を考慮して縮小手術を選択するという考えは妥当と考えられた.

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