2014 年 28 巻 7 号 p. 848-853
完全胸腔鏡下肺葉切除術後の肺瘻治療に難渋することはしばしば遭遇する.本研究では,完全胸腔鏡下肺葉切除後肺瘻に対して,自己血や薬剤の胸腔内投与による肺瘻治療を行った症例の治療成績を明らかにし,特に術後早期に行う自己血パッチの有用性を検討した.当施設で肺癌に対し完全胸腔鏡下肺葉切除術を施行した術直後に気漏を認めた41例を対象とした.気漏に対して,術後早期に自己血パッチを行った群:A群(n=16)と,術後早期は経過観察のみとした群:B群(n=25)の2群に分けた.術直後の気漏量(4段階に分類)は,A群の方が多かった(p=0.001).術後2日目までに気漏が消失したのは,A群で9例(56%),B群で5例(20%)と有意にA群で多かった(p=0.04).自己血パッチを術後早期に行うことは,完全胸腔鏡下肺葉切除術の術後肺瘻に対して有効で安全な治療法である可能性が示された.