日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
肺癌と原発不明縦隔リンパ節癌の同時二重癌の術後10年目に発生した異時多発肺多形癌
河本 宏昭寺本 典弘上野 剛末久 弘澤田 茂樹山下 素弘
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2015 年 29 巻 1 号 p. 15-19

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抄録

症例は60歳男性.レントゲンで右上肺野異常影を指摘され,CT検査で右S1に25 mm大の結節を認めたが明らかなリンパ節腫大は認めなかった.右肺癌の診断で右上葉切除術+ND2aリンパ節郭清を行った.病理検査では上葉の腫瘍は高分化型腺癌であったが,気管気管支リンパ節に大細胞癌を認めた.肺高分化型腺癌pT1N0M0, Stage IAと原発不明縦隔リンパ節大細胞癌の同時性二重癌と考えフォローアップした.無再発で10年経過し左上葉に肺癌を疑う腫瘤が出現し,左上葉切除を行うと組織学的には紡錘形癌と腺癌よりなる多形癌であった.右上葉腺癌と左上葉多形癌は,縦隔リンパ節大細胞癌とは組織学的に異なる癌と診断された.原発不明縦隔リンパ節癌は稀で,肺癌手術で偶然発見された場合には,切除肺に原発巣が隠れている可能性があるが,慎重な病理学的検索にも関わらず原発巣が見つからない場合には,厳重なフォローアップが必要である.

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