2015 年 29 巻 1 号 p. 6-10
有茎大網弁を用いた呼吸器外科手術25症例の臨床的検討を行った.適応疾患は膿胸11例,肺切除後気管支断端瘻8例,気管支吻合部被覆5例,胸骨骨髄炎1例.膿胸,気管支瘻,胸骨骨髄炎症例では全例一期的に軽快退院し,吻合部被覆症例では気管支瘻は発生しなかった.有瘻性膿胸と気管支断端瘻に対する大網充填術各1例で再燃を認めた.術後合併症では,吻合部被覆症例で吻合部狭窄と呼吸不全を各1例認め後者は術死した.大網作成に伴う重大な腹部合併症は認められなかった.手術手順では,開腹先行が開胸先行に比較して,有意に手術時間が短く,出血量も少なかった.膿胸,気管支断端瘻等に対する大網充填術は一期的治癒が期待でき有効な手術方法である.一方,吻合部被覆では気管支瘻発生の危険性と手術侵襲を考慮し慎重に適応を判断すべきと考えられた.